4月の深夜、SNSをザワつかせた若手ディレクター対談
原田和実
最初にYouTubeで大森さんの『Raiken Nippon Hair』を観たときは「うわ、やられたな」と思いましたね。
大森時生
ありがとうございます。最初に架空言語の番組を作るというアイデアは浮かんでいたので、パッと見た瞬間になにをやっているかわかるように、クイズ番組のフォーマットにしました。
そこから地上波(『島崎和歌子の悩みにカンパイ』)で放送するときに、トーク形式にも挑戦した感じですね。
原田
YouTubeでは違法アップロード動画のような見せ方をしていましたけど、地上波ではまた違ったロジックで「電波が混線する」という演出をしていて。それも含めて正解としか言えないですよね。
大森
ただ意味がわからないことをやっているとは思われたくないので、一応ちゃんと論理が成立したうえでズラしたことをやりたいな、と。『ここにタイトルを入力』も同じ考え方じゃないですか?
原田
そうですね、TVバラエティの構造を「予算がない」とか「人がいない」という引き算で崩したうえで、再構築するというプロセスを踏んでいるので。
無人のスタジオを映してテロップだけで放送した最終回も、TVの過剰演出に対する批評的な目線も少しあるかもしれませんが、あの映像だけで視聴者が脳内再生できるっていうのはTVの歴史の勝利だと思いますね。
大森
あれでもうTVの脱構築が「©原田」になっちゃったな、と(笑)。普通のバラエティとはズラしたことをやっているのに、幅広い層の視聴者が面白がれるポイントが示されている。僕よりもウケるところまで計算してるのはすごいなって思います。
原田
ここ最近観た番組だと、テレビ東京の『ヤギと大悟』と『霜降り明星の校内放送ジャック』が印象に残っていて。ちゃんと視聴者に何かを残せる番組だし、ああいう企画が通せるのもすごい。
大森
展開がハッキリ決まっているわけじゃなくてもGOサインが出るのがテレ東のいいところだなと思います。最近はParaviやTVerの企画募集もあるので、挑戦的な企画も出しやすいですね。
原田
今のフジテレビもすごく風通しが良くて、年齢問わず面白い企画ならどんどんやらせてもらえます。若手でも挑戦できる環境があるのは本当にありがたいですね。
大森
そうですよね。僕はクリエイターとしてではなく会社員として採用されたからには、自分が面白いと思ったことをフルスイングでやるのが会社への礼儀だと思っているので。ゴールデンの番組も頑張りつつ、これからも視聴者の心がざわざわするような番組を作っていきたいです。
原田
僕も佐久間(宣行)さんやTBSの藤井(健太郎)さんのように「原田が作る番組なら面白そう」と思ってもらえるようなクリエイターになれたらな、と思います。