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ジャズと食と築地、そしてウイスキー。新しい音楽フェス「築地JAM」をリポート


4月のある週末、東京・築地本願寺にて新しい音楽フェス「築地JAM 2025」が開催された。音楽と食、築地が融合する新しいフェスとして今年から始まったこのフェスにBRUTUSが潜入。熱気に満ちた1日をレポートする。

photo: Jun Nakagawa / text: Shunsuke Kamigaito

多様な音楽と地元の食が築地本願寺で交差する

2025年4月19日(土)、東京・築地本願寺にて新しい音楽フェス「築地JAM 2025」が開催された。これは、BRUTUSと南青山にあるミュージックホール〈BAROOM〉が主催するジャズフェス「BRUTUS × BAROOM JAZZ WEEKEND(BJW)」から派生した1日限りのスペシャル・イベント。

くるり、渡辺貞夫カルテット2025、BIGYUKI、馬場智章、小野リサ、Banksia Trio、Dos Monosという、世代やジャンルを超えた豪華ラインナップによるステージに加え、築地を代表する名店をはじめ多くの飲食店も出店し、代々受け継がれる地域の味を観客は楽しんだ。今回が初の開催であるにもかかわらず、チケットはすぐに完売。夏を先取りしたような絶好の“フェス日和”の中、3000人以上の観客が音楽と食に彩られた特別な土曜日を満喫した。

築地本願寺にて開催された新しい音楽フェス「築地JAM 2025」。国の重要文化財にも指定されている本堂前にステージが設置され、ジャズを中心に幅広いアーティストたちによる演奏が繰り広げられた。築地の味に触れられる飲食エリアも充実。音楽と地域の食が交差する非日常の時間を多くの人々が楽しんだ。

ジャズを中心にジャンルを越境した6組が鳴らした音楽

すでに多くの人々が会場内で食事とお酒を愉しむ中、日本を代表するサックス奏者・渡辺貞夫の率いるカルテットが登場し、「築地JAM 2025」の本格的なスタートを告げる。

歴史ある築地本願寺の本堂を背にしたレジェンドの演奏はさぞかし荘厳なものになるだろうと思いきや、その佇まいはどこまでも自然体。会場を優しく包み込むような懐の深いパフォーマンスに、世代を問わず多くの観客が魅了された。続いてステージに現れたのは、日本におけるボサノヴァの第一人者・小野リサ。

ピアニスト・林正樹とのデュオで「花は咲く」のポルトガル語バージョンなどを披露し、熱気の高まる会場に爽やかな風のような歌声を届ける。MCでは、父親とのつながりで幼少期から親交のある渡辺貞夫と再会できた喜びを語り、このイベントが出演者にとっても貴重な機会になっていることを印象づけた。

ライブは渡辺貞夫カルテット2025からスタート。伝説のサックスプレーヤーの貴重な演奏をひと目見ようと多くの人々が集まった。

悠然とステージに立つ渡辺貞夫。オリジナル曲「BUTTERFLY」など7曲を披露した。

小野リサの透き通った歌声と林正樹の繊細なピアノが美しく溶け合う。そのエキゾチックな雰囲気に思わずうっとりしてしまう。

演奏が終わると林正樹をステージに残し、そこにベーシストの須川崇志とドラマーの石若駿が合流。日本のジャズ・シーンを牽引する精鋭が集結したBanksia Trioの演奏が始まる。お互いの呼吸を確かめ合うかのような緊張感のある音の交差。丁寧につくりあげられたグルーヴは急激に勢いを増し、観客を一気にカオスの世界へと誘う。ジャズ、ボサノヴァのレジェンドが登場したフェス前半から、オルタナティブな音楽が入り交じる後半へとバトンをつなぐように、彼らにしかできない“交差点”としての重要な役割を担った。

この空気を引き継いだのは、荘子it、TaiTan、没 aka NGSからなるヒップホップトリオ・Dos Monos。ロックバンドの色合いを濃くした演奏に松丸契のサックスが重なり、ジャンルに縛られた音楽の枠組みを遊ぶように拡張していく。盛り上がりが最高潮に達した「HI NO TORI」の演奏が終わると、「お騒がせしました」という飄々とした挨拶でステージを後にした。

Dos Monosはサックス奏者・松丸契を迎えてパフォーマンス。ロック、ジャズとの融合でさらに力強さを増したステージに観客が沸く。

それに続くBIGYUKIが、徐々に暗くなりはじめた会場を巨大なナイトクラブに変容させる。バンドが織りなす心地よい音の連続に身を委ね、自由に体を動かす観客たち。サックス奏者の馬場智章も加わり、デジタルとフィジカルのサウンドがぶつかり合うテクニカルな音の応酬が繰り広げられた。イベントのラストを飾ったのは、くるりによるステージ。

言わずと知れた名曲「東京」のギターリフが鳴り響くと、会場はそれに大歓声で応える。中盤には馬場智章が再び登場。「京都の大学生」「琥珀色の街、上海蟹の朝」などをバンドとともに披露し、ロックとジャズの見事な融合を果たした。その後、くるりのみで代表曲の「ばらの花」を演奏。終わりゆく「築地JAM 2025」を惜しむかのように、切なさの滲む壮大なバラード「奇跡」でステージを締めくくった。

Banksia Trioのメンバーとしてドラムをプレイする石若駿。この日はくるりのサポートも務めた。

野外での演奏は久しぶりだったというBanksia Trio。大会場を意識したセットリストで、3人のエネルギーを解放させた。

BIGYUKIによる熱狂のパフォーマンス。メンバーにRandy Runyon(Gt)、Brian Richburg(Drums)を迎え、ラストには馬場智章も登場。

Dos Monosのステージは、昨年リリースしたアルバム『Dos Atomos』収録の「MOUNTAIN D」からスタート。

サックスを加え、新たなアレンジで演奏されるくるりの名曲たちが、この日の特別感を揺るぎないものに。

BIGYUKIとの共演に続き、くるりのステージにも立つなど大活躍の馬場智章。「築地JAM」成功の立役者となった。

多様なジャンルの音楽を取り入れ、あらゆるフェスに立ってきたくるり。貫禄を感じる演奏で、「築地JAM」のフィナーレを飾る。

音をつまみに、築地の食を

ミュージシャンたちの演奏に人々が魅了される一方、会場に用意された飲食エリアも大きな賑わいを見せた。日本が誇る食の台所、築地。そこで飲食店を営む目利きたちが、会場内で海鮮、野菜、日本酒、クラフトビール、ワイン、蕎麦、卵焼きなど多様な地域の味を提供している。ライブのスタートとなる渡辺貞夫カルテット2025のステージは15時45分からだったが、開場時間の12時になった途端に受付にはたくさんの人々が。その様子からも、築地の食と音楽が交差するこのイベントの醍醐味が広く伝わっていることを感じさせられる。

3台並んだキッチンカーは、築地内の各町会にゆかりのあるメンバーがチームを組んで運営しているもの。「合鴨焼売」や「海鮮串焼き」「汁なし坦々麺」など、それぞれの個性が光るメニューを目当てに、多くの来場者が列をつくった。

「食事を提供しているのは築地のオールスター。昔からの仲間たちと地元のイベントをお手伝いできるのは嬉しいですし、誇りを感じています」と語る出店者。

今回をきっかけに継続的なイベントになることを望む声も多く聞かれ、地域からの期待の高さがうかがえた。また、飲食エリアに設置されたDJブースでは、Jamon IbericoやDJ MAS a.k.a. SENJU-FRESH!、真鍋大度らがプレイ。ソウルやジャズ、ヒップホップなど幅広いジャンルのグッドミュージックをつなぎ、食事やお酒を堪能する人々の気分を盛り上げた。

ウイスキーが音楽と築地と混ざり合う


今回のフェスは「BRUTUS × BAROOM JAZZ WEEKEND(BJW)」から派生したという経緯がある。サントリー、BRUTUS、POPEYEが共同で運営する「NORMEL TIMES」は、ウイスキーと文化の交差点のようなウェブメディア。ウイスキーとその周辺の文化を発信している。ウイスキーとも親和性の高いジャズの魅力を発信する「BJW」の意義に強く共感し、イベントをバックアップした。こうした縁がつながり、「築地JAM」の飲食エリアでも「SUNTORY WORLD WHISKY 碧Ao」(以下、「碧Ao」)の専用ブースが出店された。

「碧Ao」は、サントリーの自社蒸溜所でつくられた「世界5大ウイスキー」の原酒を匠の技でブレンドしたウイスキー。専用ブースでは「碧Ao」の魅力を広めるべく、同ウイスキーを用いた「海薫るハイボール」が提供された。当日は入場ゲートにて「NORMEL TIMES」のコースターとステッカーを配布。ディスカウントクーポンも同封され、より多くの人々に「碧Ao」の上品な甘さとスモーキーな味わいを知ってもらうきっかけを与えた。

「碧Ao」を堪能したのは観客だけではない。楽屋付近に用意された「碧Ao」コーナーでは、出演するアーティストたちも次々とタンブラーを手にした。緊張感の漂う出演前の時間や、演奏が終わった後の乾杯の時間。それぞれのペースで「碧Ao」を愉しみ、築地の食に舌鼓を打ち、ジャンルを越境して音楽を愛する仲間たちと談笑する。こうした光景が会場の至る所で見られた。

ジャズを中心とする音楽と、築地の食文化、そしてウイスキーが交差し、観客が、出演者が、地域が一体となった「築地JAM 2025」。今回の盛況を受け、早くも次の開催を心待ちにせずにはいられない。