35歳を過ぎると、相席屋には入れない
吉田靖直
去年相席屋に行こうとしたら、“35歳までです”って言われて入れなくて。
大垣翔
え⁉相席屋そんなことするの。
山本慶幸
対象じゃないんだ。
吉田
年齢上、もう若者とは言えないのかなと。
鳥居真道
ハローワークの若者枠みたいなのが、34歳くらいまでなんですよね
吉田
男性的な魅力も、期待されない段階に入ってきていて……。
鳥居
7年前はまだ人生やり直せそうな雰囲気でしたけど、もう諦めました。
もう若者ではない。じゃあ、どうする?
アルバム『EXTRA』では、これまでは歌というよりラップや叫びのようだった吉田のボーカルが演奏と強く結ばれ、メロディに乗り、言葉がいっそうシニカルに切なく響く。歌詞も年齢の移り変わりを感じさせる。前作からの7年で、彼らは大人になったのか。
鳥居
バンドのオケとボーカルに乖離(かいり)があると、日本語をしゃべっている方に注目が行くと思うんです。それを一体化させて、バンドとして見られたいという気持ちでした。
吉田
歌詞ができたのは4、5年前の曲もあります。でも、その時から若者というものではなくなっているという意識があって。もうちょっと、ちゃんとやらないといけない年齢になっているなと。歌詞がちゃんとしているかどうかはわからないですけど。
大垣
もう若者ではないですよね。ちょうど、前作と今作の間の変化という気がします。
吉田
でも、ただ年をとっているだけで……。一人前になりきれていない。今もボソボソしゃべっているじゃないですか。許されようとしている、責任を負いきっていないというか。
山本
収入とか社会的な責任とか、家庭とか。身の回りがやっていることをやっていないし。人と比べるものでもないんですが。
吉田
ほかの選択肢を捨てて完全に確定したら終わっちゃうんじゃないかという怖さはあります。大学の時に哲学の先生がもう十何年自分の著書を出していなくて、出したら決まっちゃうのが嫌だと。研究者としてはやばいですけど。ちょっと感銘を受けたんですよね。
大垣
どこに受けてんだよ。
吉田
そういう人がいるから大丈夫かもって思っている部分は、若干あります。
鳥居
自分にとっては音楽や映画や本は、日常とは別の次元の世界のものという感じで。日常って普通にキツいじゃないですか。人付き合いとか感じよく人に接するのとか。年齢を重ねてもそこから逃避できるものがないと生きた心地がしない。一息つけるものですね。