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旅好きフォトグラファーの次なる目的地

フォトグラファーと旅は切っても切れない関係。被写体として目的地を選ぶのか、ライフワークとしてのトリップなのか?フォトグラファーに聞く、次に行きたいところとは。

Photo: Yoko Takahashi, Gentaro Ishizuka, Norio Kidera, Shingo Wakagi / Text: Satomi Yamada

旧ソ連15ヵ国コンプリート。
高橋ヨーコ

旧ソ連15ヵ国の旅をコンプリートしたいのです。12ヵ国はすでにクリア。
行ったことがないのがキルギス、タジキスタン、トルクメニスタン。中でもトルクメニスタンに行きたい。ゆるやかな社会主義っていうのかな、旧ソ連感がまだまだ残っていそうで。

マッチ箱を積み上げたような、昭和の団地っぽいカクカクした感じのデザインが好きなんです。機能だけを追求したコミュニズム建築の一方、権威の象徴のようなムダに大きい噴水、そのコントラストがなんとも言えない。


社会主義と噴水ってテーマでついつい撮りたくなってしまいます。独裁者と慎ましい庶民の関係っていうか、時代を感じるんです。代々木公園の噴水を見ても、そんなこと思わないですから(笑)。

2度目のナミビアへ。
石塚元太良

ナミビアのダイヤモンドラッシュがずっと気になっていたので、昨年初めて行きました。ナミビアは今でもレアメタルが採れる、鉱物好きには外せない場所。

日本の田舎に行くと、野菜市ってあるじゃないですか。ナミビアには、その鉱物版があって。普通は鉱物の部分だけを削り出して売られていることが多いんですが、母岩といって周りの岩石がついたままの大きな石がゴロゴロ置かれているんですよ。化石のように過去の遺物が現代の生活へ浸透しているさまに写真家として興味があります。

また、同じ旅先に繰り返し行くことも好きで、視点を切り替えると知っている場所がまったく違って見えることに面白さを感じる。気軽には行けないけれど、また旅したい地です。

染色家・柚木沙弥郎さんがスケッチしたイタリア。
木寺紀雄

染色家のさんに初めてお会いしたのは、今から約8年前。柚木さんのこれまでの旅の思い出話とともにスケッチブックを見せてもらったら、丁寧に日付がメモしてあって。
ちょうど柚木さんが今の僕の年頃だったんです。なんとなく運命的なものを感じて、そのスケッチを巡る旅をしました。

50年も前の情報だったので、建造物や町の様子が変わっていて、その通り写真に収めるのは難しかったのですが、出会えた人や物には新たな発見がありました。そうやって、人から聞いた地に旅することがよくあります。

次の旅もまた、柚木さんのスケッチを巡ろうと思っています。前回イタリアに行った時、アッシジまで到達できなかったので次の目的地にしたいですね。

5年かけて記したいロチェスター。
若木信吾

初めてアメリカを訪れてから30年という節目を迎えた昨年、学生時代を過ごしたロチェスターを再訪。その地に立つと一瞬で当時の気持ちに戻り、年を重ねてから過去を振り返るって面白いなと実感しました。

その時、大学の恩師である写真家デニス・デフィバウに会ったら、写真集を出していたんです。それは、画家であり、文筆家、冒険家でもあるロックウェル・ケントが1930年代に過ごしたグリーンランドでの軌跡を追ったもの。地元の人と交流を重ね、彼らの生活に入り込んだ手法に刺激を受けました。

僕も、できれば年1回のペースで5年かけてロチェスターに通い、ソーシャルヒストリーを記録していきたい。そして、写真集にまとめるのが、今の目標です。