愛好家も集う話題店から
進化を遂げた“元祖”まで
ゆっくり風呂に浸かり一晩眠れば、旅の疲れも胃袋もすっかりリセット。2日目は朝から大山町の〈公園食堂おおさか〉へ。
店の前を走る国道9号は、山陰自動車道が開通する前まで、地域の幹線道路だった。旧店名は〈おおさかモーテル〉。ロードサイドダイナーだもの、モーテルがナウいだろ、と時代を感じる命名の逸話が愛おしい。
冷蔵ケースに並ぶ惣菜をトレーに載せ、定食や丼などは別注文するカフェテリアスタイルで、メニューは50種超え。それでもラーメンは、牛骨からだしをひく完全自家製。麺はやや太く気持ち軟らかく、スープはほのかに甘い。優しい味で朝ラーに好適。
〈公園食堂おおさか〉
ブログやSNSなどとも親和性が高いラーメンの世界だが、全国を食べ歩くマニアも目指す一軒が、米子市〈麺屋無双〉。
創業時は魚介系の店だったが、土地に伝わる味を受け継ぐべく牛骨ラーメンをメニューに加えた。香味野菜を一切使わず、大量の牛骨と牛すじを静かに炊いてとるスープが特徴。純度の高い濃厚スープが、縮れた麺によく絡む。インパクトのある旨さだ。
〈麺屋無双〉
ここまでで6軒。ビジュアルに大差はないが、味は実に個性豊か。奥深きかな、牛骨ラーメン。食べれば食べるほど、知りたくなる。欲張りだしたらキリがないが、大トリは出発前から決めていた。牛骨ラーメンの元祖といわれる米子市の〈満洲味〉だ。
戦中を満洲で過ごした先代が、現地で知った味をヒントに、帰国後、安く手に入る牛骨でラーメンを作り店を構えたのが75年前。平成元(1989)年、現在の場所に移転し、2代目が後を継ぐ。
多くの店が、牛骨“だけ”でとるだしにこだわるが「昔と違って今は色んな食材が手に入る。うちでは牛骨をベースにいりこ、昆布などを少しずつ加えています。おいしいから」と話す。見た目はやや濃いめだが、味わえばまろやかでじわっと旨味が膨らむ。
もともとは使い道のなかった牛の骨。「あるものを生かし」「牛の命を、余すところなく」と考えた先人たちの知恵や思いごと今に伝えるべく、牛骨だけを貫く店も素敵だし、「今の豊かさのありがたみを」と、工夫した味にもぐっとくる。1杯500〜600円から。学生もご隠居もお小遣いで食べられるラーメンに、土地のドラマが詰まっていた。
〈満洲味〉
ほぼ丼の中だけ見つめ続けた2日間。顔を上げたら赤く染まった夕空に、ぼんやり大山のシルエットが美しい。「次はあの店に」などと考えながら、帰りの空港へ向かった。
MODEL PLAN
1日目
10:45 レンタカーで米子鬼太郎空港を出発。
11:45 1杯目、〈すみれ〉にて。
12:30 〈塩谷定好写真記念館〉見学。
13:45 2杯目、〈たかうな〉にて。
15:00 鳴り石の浜を散歩。
15:30 〈山本おたふく堂〉で饅頭ブレイク。土産買う。
17:00 3杯目、〈香味徳〉にて。
18:00 4杯目、〈京ら〉にて。
19:30 皆生温泉泊。満腹なので部屋飲み。
2日目
09:30 ホテルをチェックアウト、出発。
10:30 5杯目、〈公園食堂おおさか〉にて。
11:45 鍵掛峠で大山撮影、インスタ投稿。
13:30 6杯目、〈麺屋無双〉にて。
14:00 〈SHIMATORI〉でコーヒー休憩。土産買う。
15:00 7杯目、〈満洲味〉にて。
羽田空港から米子鬼太郎空港まで約1時間20分(米子鬼太郎空港からJR米子駅周辺まで車で約20分)。
JR新大阪駅から米子駅までは山陰新幹線、特急やくもで約3時間20分。米子駅から琴浦町まで車で約40分。