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Tonydot(NoNations.)のジャズの入口〜THIS IS MY STANDARD〜

4月14〜17日に開催される、「BRUTUS JAZZ WEEKEND 2023」。会場である〈BAROOM〉の人気企画「THIS IS MY STANDARD」とコラボレーション。ジャズに出会うきっかけをつくる本イベントの豪華出演アーティストたちに、次世代に残していきたい、ジャズの入口となる名曲を紹介してもらった。第4弾は、東京はもちろん、現在は海外からも注目集めているDJチーム、No Nations.のメンバーであるTonydotさん。

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corporation: Atsuko Yashima / text: Katsumi Watanabe

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東京を拠点に活動するDJチーム、No Nations.のメンバーであり、現在はロンドン在住のTonydotさん。

4月14日から17日に〈BAROOM南青山〉で開催される「BRUTUS JAZZ WEEKEND」。その2日目にあたる15日の締めくくりに、DJとして出演するNo Nationns。Tonydotさんは残念ながら不在だが、現在クラブのフロアを席巻するDJチームだけに、どんなプレイになるのか期待は膨らむばかりだ。

Tonydotのジャズの入口〜THIS IS MY STANDARD〜

「Black Focus」Yussef Kamaal
「Juan Pablo: The Philosopher」Ezra Collective
「In The Moment」Makaya McCraven

クラブでDJで出会った、最新のUKジャズの衝撃

東京で生まれ育ち、20代前半にスタッフとしてクラブで働き始め、同時期にDJとしても活動を開始したというTonydotさん。当初はダンスミュージックをプレイしていたが、ユセフ・カマールの楽曲と出会い、次第にジャズへ傾倒していったという。

「7年ほど前になりますが、僕が働いていたクラブで、ワールドミュージックのパーティが始まったんです。その時にユセフ・カマール『Black Focus』のタイトル曲がかかったんですよ。

シンセとエレクトリックピアノで緩やかに始まり、次第にリズムがグルーヴしていく曲で。もう本当にかっこよくて、すぐにレコードを買って聴きまくりました。

ジャズやファンクやディスコの要素もあるし、ブロークンビーツやハウスの要素もありました。当時リリースされたばかりの作品だったので、色々調べてみるとどうやらイギリスのジャズに分類される音楽だとわかったんです。それからUKジャズ、それからもちろんアメリカのジャズも聴くようになっていきました」

「Black Focus」Yussef Kamaal
「Black Focus」ユセフ・カマール
ドラマーのユセフ・デイズ、キーボード奏者のカマール・ウィリアムスによるユニットが、2016年にリリースしたファーストアルバム『Black Focus』の冒頭に収録。「全曲大好きなんですけど、やっぱり1曲目のタイトル曲に、すべてのインパクトが詰まっている気がします」(Tonydot)。

古き良きジャズをアップデートした新しいジャズ

「ジャズとはラッキーな出会い方ができました」という彼だが、それまではジャズという音楽のジャンルは知っていても、ハードルが高く感じたのか、積極的に聴くことはなかったという。

「ユセフ・カマールの曲と出会うまで、やっぱり“ジャズはオシャレな音楽”というイメージが強く、例えばビル・エヴァンスなどのモダンジャズなど、パッと一聴するだけだったんですよね。

ところがユセフ・カマール『Black Focus』の曲の構成など、掘り下げてみると、例えば60年代後半のエレクトリック期のマイルス・デイヴィスやハービー・ハンコック、ウェザー・リポートなどに、すごく近いものがあった。

今のUKや西海岸などのジャズは、古き良きジャズのスタイルを、その影響を受けた現代のミュージシャンたちが、最新の楽器や機材を駆使してアップデートしていることがよくわかったんです。

それ以降、1950年代のモダンジャズも聴くようになって、本当は“ジャズの入口”なら、『クラシックなものの方がいいかな?』と思ったんですけど、正直に自分が一番影響を受けた新しいUKジャズにしました(笑)」

1990年代にはUKでアシッドジャズ。そして同時期のアメリカでは、ア・トライブ・コールド・クエストやギャングスターのようなヒップホップのサンプリングソース、そしてハウスミュージックにジャズやラテンの要素を取り入れたニューヨリカン・ソウルなど。その時代のミュージシャンたちによって新しい解釈を加えられ、伝承されてきた。

「ユセフ・カマールを聴いて『なぜ、こんなにかっこいいと感じるのか?』。自分なりに掘り下げた結果、一番グッとくるポイントがインプロビゼーション(即興演奏)だったんです。

聴き慣れているダンスミュージックやポップスは「ここでサビがきて、ギターソロになって」みたいに、聴いているうちに曲の構成がわかってきますよね。

ところが、ジャズはもっと瞬間の感情が音に反映されているというか、もっとグルーヴにリアル感が重なってる気がして、これだ!!ってなりました。」

エズラ・コレクティヴが、世界中で愛される理由

そして、つい先日来日公演を行ったエズラ・コレクティヴの『Juan Pablo: The Philosopher』に出会ったという。

「完全に打ちのめされました(笑)。フェラ・クティのようなアフロビート由来のホーンアンサンブルがあり、インプロも多い。ジャズはもちろん、アフリカやラテンもミックスされていて。そこに新しいグライムのリズムが入ってきたりして。

モダンジャズを評して『ジャズはいつでもヒップな音楽だった』ということを聞いたことがありますが、それならエズラ・コレクティヴほどジャズを体現しているバンドはいないはずです。

メンバーもいろいろなルーツを持った人がいて、すごく多様性が高いし、今のロンドンや社会的な風潮をレペゼン(体現)していると思います。ロンドンでもめちゃくちゃ人気があって、全然チケットが取れない状態です」

「Juan Pablo: The Philosopher」Ezra Collective
「Juan Pablo」エズラ・コレクティヴ
2017年にリリースされたセカンドEP。キーボードのジョー・アーモン・ジョーンズを中心に、フェミ(Dr)とTJ(Ba)のクレオソ兄弟が引っ張る、アフロビート復興の決定打。サックスにはヌバイア・ジョーンズ、そしてなんとミックスはフローティング・ポインツが担当。「フェスとか、野外で聴いたら最高ですねぇ」(Tonydot)。

魅力的すぎたロンドンのUKジャズシーン

日本でも注目が集まってきたUKジャズだが、「めちゃくちゃ面白いから、DJでもプレイしてますし、その魅力をもっと日本にも届けたいと思っています」と語ってくれた。

「No Nations.でパーティを開催し、UKのレコードを買いまくっていましたが、

日々SNSから伝わってくる情報がおもしろ過ぎて、イギリスへ引っ越したんですよ。「ロンドンでは一体何が起きているんだ!」って(笑)。いざ来てみたら、毎日が発見だらけで、すごい(笑)。

まずは、UKジャズの中心になっているのが、TRCことトータル・リフレッシュメント・センター。ここは本来、音楽スタジオなんですが、長期間の借り入れが可能なため、いろいろなミュージシャンが住んでいるような形で滞在しています。

ヌバイア・ガルシアやシャバカ・ハッチングスもよく見かけるんですよ。そのリビングで、日々リハーサルやジャムセッションが行われ、調子がよければそのままスタジオでレコーディングすることもあります」

TRCの中で、憧れのレーベルオーナーとも出会ったというTonydotさん。

「アメリカからジョン・キャロル・カービーを招いて、TRCのメンバーとセッションするイベントを開催するなど、違う国からもアーティストを招待して、また新しい刺激を仲間、コミュニティに伝えていってるんです。

そんな中に、僕が大好きなドラマーのマカヤ・マクレイヴンの『In The Moment』をリリースしたレーベル〈International Anthem〉のオーナー、スコッティ・マクニースがいたんです。

このレーベルはスピリチュアルやフリージャズ方面の良作をたくさん発表していて、その中でも『In The Moment』は、フロアで聴いても、家でのリスニングも可能な作品で大好きだったんです。

スコッティ自身も日本のシーンには注目していて、いつか日本でイベントを打ちたい。こういうコミュニティがミュージシャンを支えているからこそ、どんどん新しい音楽が生まれてくるんだなと思いましたね」

「In The Moment」Makaya Mccraven
「In The Moment」マカヤ・マクレイヴン
2015年にシカゴの〈International Anthem Recording Company〉から発表されたドラマーの名盤。ヒップホップにも近いビーツと、ジョシュア・エイブラムスによる太いベース。そこにジャズティン・トーマスによる美しいビブラフォン、ジェフ・パーカーによるキレのいいギターが乗った心地よい作品だが。ラストの「Finances」に驚愕。「基本的にフリーやスピリチュアルジャズのレーベルなので、心地よいだけではないんです」(Tonydot)。

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