三谷幸喜率いる〈東京サンシャインボーイズ〉が30年ぶりに復活。西村まさ彦と近藤芳正が思いを語る

「30年間の充電期間に入ります」と絶頂期に宣言した劇団〈東京サンシャインボーイズ〉。今年、『蒙古が襲来』で復活公演を果たす。充電期間中も三谷さん作の2人芝居でたびたび共演した近藤芳正さんと西村まさ彦さんに思いを語ってもらった。

photo: Wakana Baba / text: Tomoko Kurose

三谷脚本に魅せられたメンバーが再び集まる奇跡

西村まさ彦

本当に復活するとは僕は思ってなかったんですよ(笑)。

近藤芳正

僕は、15年前に新宿シアタートップスのクローズイベントで限定公演『returns』をやったときに、もしかしたらできるのかも?と思ってました。

西村

あのときは興奮したよね。みんなの元気な顔を見られて嬉しかった。

近藤

初めてお客さんの反応を気にせず、お祭りみたいに楽しんだような気がします。

西村

でも、あれがはしゃいで許されるギリギリの年代だったんじゃない?僕は決してうまい役者じゃないので、「15年間何をやってたのか」と言われそうで緊張しているところもあるんですよ。

近藤

そんな(笑)。僕は今回も楽しもうと思ってます。復活公演はもはや演劇の奇跡なので。

西村

コンちゃんは本当に芝居が好きだよね?僕はそこまで熱くなれないところがあって、『笑の大学』(1996年・98年)や『90ミニッツ』(2011年)で2人芝居をやらせてもらったときも、必死にやるしかないと思ってました。

近藤

僕は『笑の大学』の頃は、西やんの魅力に負けないようパワーを引き出してもらったようなところがあるので、本当に感謝です。

西村

どちらも公演期間は長かったけど、芝居以外ではほとんどしゃべらなかったよね?

近藤

飲みに行くこともなく(笑)。その距離感が気持ちよかったですね。お芝居のいいところは、人見知りでも、役でいきなり夫婦になったり、セリフを介してコミュニケーションが取れること。すると普段の会話をするよりも数倍、相手の体調やら心情がわかるんですよね。それが楽しい。

西村

それはあるね。東京サンシャインボーイズも決して仲が悪いわけじゃないけど、ベタベタな関係でもないんだよね。

近藤芳正(左)衣装協力(パンツ)/RAINMAKER KYOTO TEL:075-708-2280、西村まさ彦(右)

近藤

僕は客演の立場でしたけど、いい意味で個人主義なところが心地よかったです。三谷さんの脚本が好きだから集まっているという感じで。

西村

その一点でまとまっていた気がする。毎公演、台本をめくるのが楽しみだった。

近藤

台本の上がりが遅いことに、誰一人文句言わず、三谷さんを信じて、みんなひたすら自分の役割を務めていた。あれは客演の立場から見ても、ちょっと感動的でした。

西村

三谷は「僕は0から作っている。君たちは1から。それなのにできないことはない」と言ってましたね。

近藤

「(僕は)骨身を削って書いているのだから、肉を削るくらいの気持ちで臨んでほしい」というようなことをおっしゃっていたと聞いたことがあります。

西村

若い時分にそんな言葉を聞いたので、その後どの脚本家に対しても真摯な気持ちで向き合えるようになりました。

近藤

僕は『99連隊』(1991年)から参加させていただきましたけど、「東京サンシャインボーイズの舞台に出られるなら、食べられなくてもバイトしながら暮らせばいいや」と思ったんです。今回の『蒙古が襲来』は昔を懐かしむのではなく、三谷さんにとっても挑戦のような、新境地の舞台になるらしいですね。

西村

演じるときには、心は老いず、20代と変わらぬ気持ちで表現できたらと思います。

近藤

「演劇の奇跡」を、ケガなく、喧嘩なく、完走したいですね!

『蒙古が襲来 Mongolia is coming』 東京サンシャインボーイズ
パルコ・プロデュース 2025 東京サンシャインボーイズ 復活公演『蒙古が襲来 Mongolia is coming』
作・演出:三谷幸喜/出演:相島一之、阿南健治、伊藤俊人、小原雅人、梶原善、甲本雅裕、小林隆、近藤芳正、谷川清美、西田薫、西村まさ彦、野仲イサオ、宮地雅子、吉田羊/2月9日~3月2日、PARCO劇場で上演。全国公演ツアーあり。