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秘密のバーで台本なしのガチトーク。福山雅治×秋元康〜後編〜

TOKYO FMとJNN各局で、月曜から木曜の深夜1時に放送している『TOKYO SPEAKEASY』(トーキョースピークイージー)。 「SPEAKEASY」なるバーのカウンターにやってきた様々な業界の大物2人の会話を、リスナーが“盗み聞き”するという設定が人気だ。番組のプロデュースを手がける秋元康が、福山雅治を招いて初来店した回を誌上再現。前回の「秘密のバーで台本なしのガチトーク。福山雅治×秋元康〜前編〜」も読む。

Photo: Tetsuya Ito / Text: Asuka Ochi / Hair&make: Toshihiko Shingu / Styling: Hiromi Shintani

さらに夜は更け……、アフタートーク。

秋元康

初めて自分の番組に出ましたけど、楽しいなぁと。雑誌の対談とはまた違うし、福山くんとも結構会ってはいるけど、ラジオっていうエクスキューズがあるからきちんと話せる。
たぶん飲みながら話してたら、また違う話になるでしょうし。

福山雅治

今夜は、ラジオという媒体だからこその話をしたかった。

おこがましいんですが、秋元さんって超かわいいんですよっていうことと、プロデューサーの秋元さんをプロデュースする秋元さんはいるのかを聞いてみたかったんです。「いない」と、即答でしたが。

秋元

かつてはいたのかもしれないけどね。自分の中に客観性を持ったプロデューサー的な存在はあったと思うんだけど、いつからかその存在が邪魔になって、「好きなようにやらせてくれ」って、途中から追い出しちゃったのかもしれない。

即答でいないって答えたのは、今、俺がこういうことをやったらいいなというのに、打算や計算でやることは、まずないから。若い頃はそういう部分もあったけど……。

福山

好きなことがわからなくなった時期ってあるんですか?

秋元

それはなかったかな。好きなことが面白いことなのかどうかというのを吹っ切れるかじゃない?

福山

僕は40歳を越えてから、時々迷子になることがあります。自分は何が好きなんだろうかと。

秋元

本当はあと1時間あったら、そこをじっくり聞きたかった。人間って自己嫌悪を抱えるから芸術家になれるんだと思うんだけど、福山雅治は本当にいつも自問自答してるんですよ。
これだけモテて、成功してて、恵まれているんだから、いいじゃん。何をそこで迷うの、って。

福山

あはは(笑)。迷い続けてます。
パスカルの『パンセ』を読みながら、今から350年くらい前にこれを書いてたパスカルでもこれだけグジグジと考えてたんだから、俺も悩んで当然!って。

秋元

そういうふうに悩もうとする思考回路があるのがすごいと思う。

福山

悩みも過ぎると鬱っぽくなってしまうんですけど(笑)。でも、作詞も作曲もお芝居も、そういうふうに入り込めている時こそが一番クオリティが高いんじゃないかと思い込んじゃってるんですよね。

秋元

やっぱりポップスターだからね。「Popstar」って曲もあったけど、あそこに本音が描かれてるよね。

福山

ありがとうございます。アルバムに収録されてる「Popstar」は、そのニュアンスがキチンと楽曲に落とし込めた手応えがあります。

(ここで突然、リリー・フランキーさんが乱入)

福山

あれっ、びっくりなんですけど。僕ら今番組でまたリリーさんの話してました。

リリー

やめてくださいよ。

秋元

俺とかリリーさんだったら、抜栓してなかなか開かないようなコルクは下に落とすけど、福山くんは丁寧にやるんだよね、とか。

リリー

普通、折れちゃったら落として濾過するんですよ。プロのバーテンダーでもオールドボトルは3本に1本は折ります。でも、この人はそもそも折らないですからね。

福山

絶対、折らないです。

リリー

この間、福山くんが俺の『スナック ラジオ』にゲストで来て、俺がいない時に秋元さんと大根くんとで俺の話をして、っていうのをラジオでわざわざ言うんですよ。

福山

その話、今日もしました。面と向かっては言いにくいんで。

リリー

なんでそんな大切な話をラジオでするのよ、って(笑)。

福山

ラジオじゃないと言えないこともあるんですよ(笑)。

秋元

これ今、ブルータスのラジオ特集の取材中なんですけど、リリーさんはどう思います?ラジオの構成やってたわけじゃないですか。

リリー

ラジオの仕事は好きですね。少ない人数でやれるし、ほかのメディアと比べて、リスナーと濃い関係になれる。実際にリスナーだった人が俺の運転手をすることになったりしましたからね。

福山

僕もそうでした。もともとオールナイトのリスナーだった子が、僕のマネージャーをやってましたね。

リリー

もしこの3人でラジオをやるとなったら、普段話してることとそんなに大差ない話ができるんじゃないですかね。ほかのメディアだとそうはいかない。
そういう密室性があるのがラジオだと思います。

秋元

放送作家としてラジオをやっていた時には、ディレクターやプロデューサーからコーナーの企画案を求められていっぱい作ってきたんだけど、ラジオの面白さって、何も決めず、そこで話をすることにみんなが聞き耳を立てることじゃない?

生放送でガチンコのフリートークの番組を企画した一番の意図は、無駄話っていうのが、すごく大事だってこと。奇しくも今、Clubhouseが当たってるのも、たぶんそういうことで。あれはラジオに対するアンチテーゼで、ディレクターもMCもいないなか、自分たちで勝手にしゃべるってことが面白いんだってことだよね。

一時期ラジオが低迷して、テレビのスターをラジオに持ってきた時代があったけど、それだけじゃ、つまらない。で、今また原点回帰して新しい人を発掘しようとしてるのは面白いんじゃないかなと。

僕がテレビ東京の佐久間宣行に『オールナイトニッポン0』を絶対やらせた方がいいって言ったのも、当初は大反対されたんだけど、そういう変な人が出た方が面白いからだったんだよね。

福山

ラジオとSNSの親和性は面白いですよね。
2ちゃんが立ち上がった当時、2ちゃん住民は自分たちは覗かれてないと思ってラジオ実況してましたよね。裏実況、って感じで。

その後Twitterが登場して、表の実況という位置づけになっていって。ラジオとSNSとのつながりは、僕がラジオを始めた時代とはまた違う盛り上がり方になっている。ラジオを取り巻く環境や求められ方は、時代とともに変わっていくでしょうが、日本はたびたび大きな災害も起こるので、その時のライフラインとしても絶対に必要なのがラジオ。

そこに僕らエンターテインメントの人間も同席させてもらいながら、SNS含めいろんなメディアと有機的につながっていく。今後もラジオはそうやって進化していくんだろうなと感じています。