パンを愛するあの人へ
ほのかな酸味に魅了される薪窯焼きパン
〈パン屋塩見〉の食パン
代々木という都会の一角に突如現れる、蔦の絡まる築60余年の家屋。ここでパン職人・塩見聡史さんが東京ではとても稀少な薪窯でパンを焼くのが〈パン屋塩見〉。薪の火を最大限に活用するため、基本メニューはカンパーニュと食パンの2種。これを楽しみに通う人々で夕暮れ前には売り切れる。
材料は北海道産ブレンド小麦粉と、栃木産もしくは東京産の小麦・農林61号の玄麦を店で挽いた全粒粉から作る自家培養発酵種。そして粗製糖と塩を少し。小麦粉以外も全て信頼できる作り手の国産のもの。その生地にバターをあえて不均一になるように手折りで折り込んでいく。バターが溶けることで生まれる、断面に点在する大小の気泡(バター穴)が食感と味わいにリズムを生み、眺めるだけでワクワクする。
1本の重さは堂々の約770g。1.5斤用の型に約2斤強の生地を入れて焼いているからだそうで、手渡されると思わず「えっ」と声が出るほどのズッシリ感。だが決してただ重たいわけじゃない。薪窯の熱でちょうど良く水分が抜ける塩梅を見計らって窯から出しているから、もっちり&しっとりな絶妙の食べ応えになる。
はじめにまず自家培養発酵種によるほのかな酸味を感じ、小麦の豊かな香りとともに甘みや複雑な風味がじ~んわりと広がって、噛むごとに味わいが開花する。この奥行きある何層もの風味が、何も付けずについつい食べ進んでしまう魔力を持つのだ。単体でも十分、お酒のつまみになるような、食事の主役になれる存在感!
パンを愛する人にこそ手みやげとして贈りたい一品。きっと会話が止まらなくなるはずだ。