Eat

Eat

食べる

【今日のギフト】真摯な仕事から生まれる艶やかな琥珀色。〈ゆしま花月〉のかりんとう

あの人の笑顔が見たい。お世話になっている友達や家族、恋人に贈りたい、ちょっと楽しいプレゼントを毎日紹介。

photo: Shu Yamamoto / text&edit: Yoko Fujimori

連載一覧へ

和菓子を愛するあの人へ
東京を代表するかりんとう

〈ゆしま花月〉のかりんとう

昭和22(1947)年創業、江戸の伝統菓子・かりんとうの名店として知られる〈ゆしま花月〉。先々代のおかみが開いた駄菓子屋がルーツであり、そこで出していたかりんとうが評判を呼び、やがてかりんとうの専門店に。湯島の花柳界が華やかだった昭和の中期、近隣の料亭などで手みやげとして重宝され、徐々に世に知られるようになったのだとか。

現在もすべて職人の手により変わらぬ製法で作られ、商品数もかりんとうと揚げせんべいなどを合わせて8種類のみという潔さ。

生地の要となる小麦粉の配合や発酵時間は季節などに合わせて随時調整し、揚げ油は酸化しにくい国産米油のみを使用。時間が経っても油臭さが少なく、後味が軽いのはそれゆえだ。温度の異なる米油を使い、大釜で“3度揚げ”することで、この店ならではのきめ細かくサクサクとした噛み心地の生地が生まれる。

看板の味は琥珀色の「かりんとう」と漆黒色の「まゆずみ」。最上級の上白糖を焦がさないよう木べらを入れながら飴状に煮詰め、それを生地に絡めると、まるでクリスタルガラスのようにきらめく。この艶こそ、〈ゆしま花月〉の真骨頂!

その名のごとく黒く艶めく「まゆずみ」は、黒砂糖ではなく黒ごまが主原料で、上白糖の飴にペースト状の黒ごまをたっぷりと配合することで、輝く漆黒が生まれ、食べればごまの香りがふわりと広がる。

丁寧な仕事から生まれる飴がけの美しさと、えも言われぬ生地のサクサク感。そして噛むごとに香ばしさと旨味がじんわりと広がっていく……!

素材も工程もシンプルだからこそ、一口食べれば違いが分かる。包装も風情があり、どこにでも安心してお持ちできる下町の名品だ。

連載一覧へ