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今日のギフト:〈小林芳香園〉の美作番茶

あの人の笑顔が見たい。お世話になっている友達や家族、恋人に贈りたい、ちょっと楽しいプレゼントを毎日紹介。

photo: Shu Yamamoto / text&edit: Yoko Fujimori

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お茶の時間を愛するあの人へ
飲み心地の良さは格別、飴色に輝く「美作番茶」

〈小林芳香園〉の美作番茶

ウェルネスやSDGsなどへの関心の高まりから、ここ数年じわじわと人気が増しているのが番茶の世界。長らく安価なお茶として緑茶に比べ格下的なイメージが定着していたけれど、低カフェインで身体への負担が少なく、地方ごとに製法も多彩で、ストーリー性も豊かなことから、こうした“地方番茶”への注目が高まっているのだ。

「美作番茶(みまさかばんちゃ)」は、岡山県北東部の美作海田(みまさかかいた)地域で、江戸時代より以前から作られる伝統茶。文久2(1862)年に創業し、江戸時代末期からこの地で製茶業を営む〈小林芳香園〉は、変わらぬ製法で美作番茶を作り続ける店だ。

夏まで大きく育てた茶葉を枝ごと切り取り、まずは薪火の鉄釜で煮出していく。煮出した茶葉を屋外に広げて何度も攪拌(かくはん)しながら天日干しで乾燥。特徴的なのは、天日干し中の茶葉に鉄釜で煮出した煮汁を繰り返しかけること。

真夏の日中、熱々の煮汁をジョウロでかけ、炎天下で瞬時にジュワッと乾燥させることで、茶葉の表面がコーティングされ、あのつやつやと飴色に輝く茶葉が誕生する。仕上げに軽く焙煎をかけ、ついに完成。これも「晴れの国」と呼ばれる岡山の温暖な気候から生まれた独自の製茶法だろう。

長時間煮出すので苦味や渋みが薄れ、カフェインも緑茶に比べて3分の1以下。枝ごと使うので枝の部分からほんのり甘みが染み出し、まろやかでゴクゴク飲めるストレスフリーな美味しさなのだ。何よりこれほど手間暇かけていながら、思わず二度見するほどのリーズナブルさ!カフェイン過多なお茶好きの人にこそ贈りたい一品だ。

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