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今日のギフト:〈有職菓子御調進所 老松〉の夏柑糖

あの人の笑顔が見たい。お世話になっている友達や家族、恋人に贈りたい、ちょっと楽しいプレゼントを毎日紹介。前回の「〈penco〉のシャープペンシル」も読む。

photo: Shu Yamamoto / text&edit: Yoko Fujimori

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涼菓を愛するあの人へ
日本の夏を表現する寒天菓子の最高峰

〈有職菓子御調進所 老松〉の夏柑糖

京都で最古の歴史を刻む花街、上七軒で明治41(1908)年に創業した〈有職菓子御調進所 老松〉。
「有職(ゆうそく)菓子」とは宮廷の儀式や典礼に用いるお菓子のことで、現在も様々な式事やお茶席に納める菓子を作り続けている。

「夏柑糖」は、毎年春から7月にかけて登場する看板菓子の一つ。日本古来の柑橘である夏みかんの中身を丁寧に取り出し、搾った果汁を寒天で固め、器に見立てた果皮に流し込んだ風流な涼菓。

夏みかんは萩や和歌山などで委託栽培されたもので、日本発祥の柑橘を後世に残したいという店の思いが宿る。袋を紐解くと夏みかんの清しい香りがふわりと広がり、ひとさじ頬張るごとに心地よい酸味と苦味に満たされる。

材料は夏みかん、砂糖、寒天だけ。シンプルだからこそ、切り分けると際立つ薄く丹念にくり抜かれた果皮の美しさや寒天のはかない口どけ、果汁の酸味・苦味を引き立てる甘みの塩梅から老舗の仕事が伝わってくる。SDGsの時代に再注目される「果皮を丸ごと器に使う」アイデアは、戦後の物資不足の時代に考案されたものだとか。

70余年変わらぬレシピで受け継がれる、気品漂う涼菓の名作。

今年の販売は7月9日(日)まで。

夏柑糖1個 (単品)1,620円、(箱入り)1,890円
*販売期間:3月20日(月)~7月9日(日)。夏みかんが無くなり次第終了。

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