〈Dior Tears〉キム・ジョーンズとトレマイン・エモリーの対話から生まれたコレクション

トレマインが昔、NYの〈マーク ジェイコブス〉のブティックで働いていた時に出会いました。

2005年です。キムがNYで最初のショーをした時に共通の友人がそのランウェイでモデルをしたのです。以来良い付き合いが続いています。

キムは私のデザイナーとしての成長や、ブランドを含めすべてをゼロから作り上げてきた経緯を知る、この世界でも数少ない人物です。私がファウンダーである〈No Vacancy Inn〉のTシャツを彼が買ってくれたことも覚えています。今回協力して美しいコレクションを作れる機会に恵まれたことを純粋に嬉しく思っています。

これまでずっと一緒にプロジェクトをしたいと話していました。今回はお互いに自分たちが本当に好きなイメージを集めていきながら、トレマインがグラフィックを制作しました。その作業はアメリカのスポーツウェアとそのルーツ、そしてそれらが世界でどう発展したかということに焦点を当てるキャッチボールとなりました。

コラボレーションする時は、いつもすべてが新鮮。コレクションの背景にあるトレマインのメッセージが好きです。いまだに社会的なタブーとして扱われているものの、皆が語り合うべき重要なテーマだと思うからです。2つのブランドを繋ぎ合わせることによって、それらのストーリーについて議論するための、より大きなプラットフォームを作り上げることができました。

トレマイン自身が、自らを十分に表現しているところです。素の自分であることを恐れず、彼の作品の中で掘り下げています。

キムには才能があるにもかかわらず、それを鼻にかけることがありません。アーティストのジュディ・ブレイムにオマージュを捧げた〈ディオール〉2020−21年ウィンター メンズ コレクションのように、作品で語られるストーリーが大好きです。ジュディ・ブレイムは私の友人でもあり、スタイルアイコンの一人として敬愛しているので、私の意見にはバイアスがかかっているかもしれませんが。キムは才能あるデザイナーであるだけでなく、研究家でもあります。彼のアーカイブは信じられないほど素晴らしい。それがすべてコレクションに表現されています。

私が最も重要だと思うのは、キムと私は、単純に集まった2人の人間ではないということです。キムが見せてくれたのは「Yo, Denim Tears, Dior, let's put it together.（デニム ティアーズとディオール、くっつけよう）」という、長年の信頼関係をベースにしたとても気楽な態度でした。そしてなおかつ彼は、常にプロフェッショナルです。

相手のビジョンをリスペクトします。これが素晴らしいコラボレーションの秘訣です。