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「強くならなきゃいけない。通じるものがある役でした」唐田えりかが語る、『極悪女王』の舞台裏

1980年代の女子プロレス黄金期の裏側を描くドラマ『極悪女王』。その撮影秘話を、唐田えりかが語る。

illustration: Shigeki Okada / photo: Naoto Date / text: Ryoko Iino / styling: Ami Michihata / hair&make: Izumi Omagari

色々あって、強くならなきゃいけない。私自身、通じるものがある役でした

唐田えりかさんが本作のオーディションに参加を決めたのは約3年前。俳優の仕事を続けるべきか悩んでいた頃だった。

「どの役になるかわからなかったけれど、マネージャーさんに“長与千種さん役が合っている”と言われたんです。実際に長与さんについて調べると、“強くならなきゃいけない、なるしかなかった”っていう部分に自分と通じるものがあった。まったく違う人生だけど、今まで経験したことや感情を、この役になら投影できるかもしれないと思えて。絶対に摑(つか)みたい役でした」

長与千種役・唐田えりか

晴れて長与千種を演じることになった唐田さんを待っていたのは、自分の弱さと向き合う日々だ。

「嬉しい、悔しい、悲しい……長与さんを演じるにあたって、すべての感情に蓋をしないで生活してみようと思ったんです。私は運動自体得意じゃなくて、作品と同じように普段の練習でも落ちこぼれ。だから長与さんの得意技であるフライングニールキックという技をすることになった時も、最初は“代役にしよう”と言われたのが本当に悔しくて、ポロポロ泣いてしまって。全部自分でやりたくて、とにかく練習しました。

そして、長与さんご本人がスーパーバイザーとしてずっと一緒にいてくださったのは心強い半面、“昔の自分はこうじゃなかったって思われたらどうしよう”とプレッシャーもあった。でも、長与さんにいただいた“自分もリングの上で長与千種を演じていたし、リングの上なら強くなれたの”という言葉の通り、いつしか私もリングに立つと、無双状態というか。負けない、という思いを自然と持つことができました」

かく言う唐田さんは、もう一つ、リングの上でわかったことがある。

「小学生の時にプロレスの試合を観に行ったことがあったのだけど、怖くて物陰に隠れていたら、アジャ・コングさんに標的にされて、台車が飛んできた(笑)。その記憶があるから、実はプロレスを好きになるところからのスタートだったんです。それで長与さんにその魅力を尋ねたところ、“観客の一人一人が、普段感じている悔しさやもどかしさをリング上の自分に投影して、応援してくれる。そして、そのみんなの思いを自分が戦って発散するプロレスは、芸術の一つなんだ”とおっしゃったんです。最初は、それを“そうなんだ”って漠然と聞いていたけど、大勢のエキストラさんの前で試合をやっていると、長与さんが言っていたことがわかった。本当に会場が一体となって、一つの物語があるんです」

唐田えりかの沁みるワンシーン

夜中の練習場での対話
「千種とダンプが、新人時代には“うちら強うなるしかなか”と鼓舞し合い、最後には“強くなれたとやろか”と振り返る。最初と終盤に登場する夜中の練習場のシーンは、実際の練習でも落ちこぼれだった私たちの姿も重なって感慨深いです」
Netflixシリーズ『極悪女王』
ヒールレスラーとして1980年代の女子プロレス黄金期を盛り上げた、ダンプ松本のデビューから引退までを全5話で描く。ビューティ・ペアやクラッシュギャルズといった人気レスラーや、彼女たちの育ての親である松永兄弟など、“あの頃の女子プロレス”に命を捧げたキャラクターたちにも焦点を当てた、群像劇でもある。企画は鈴木おさむ、総監督は白石和彌が務めた。

Netflix『極悪女王』の舞台裏が沁みる!