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サザンの新作アルバム『THANK YOU SO MUCH』を、ミュージックビデオから読み解く

新作アルバム『THANK YOU SO MUCH』の収録曲のうち、配信中の6曲はミュージックビデオが制作されている。ライブとはまた異なる、動くサザン、踊るサザンを楽しみ、新曲への理解を深めたい。

text: BRUTUS

「盆ギリ恋歌」

サザン流のお盆はカオスに雅に妖艶に

花火をバックに妖艶なダンサーを引き連れて煌(きら)びやかな舞台で踊るサザンを観るだけで、今年も日本の夏が来たと思える。江ノ電に乗って現世へ降りてくる冒頭から、夏のサザン、お祭りバンドのサザンを確信犯的に演じ切る5人が楽しめるMV。和と異国情緒、雅とエロスが入り乱れ、「ヨシオんとこ(夏倶楽部)」と歌われる海の家〈夏倶楽部〉の大久保義雄社長ご本人まで登場するカオス。

「歌えニッポンの空」

故郷へのありがとうは爽やかなラテンテイストで

メキシコの民俗音楽マリアッチの楽団に扮したミュージシャンやカラフルな衣装のダンサーたち。彼らに囲まれ海辺のテラスでリラックスして演奏する5人を観ていると、故郷を歌ったこの曲でサザンのルーツ=日本の歌謡曲に大きな影響を与えたラテン音楽を取り入れたことも自然に思えてくる。1番の「ありがっとう!」の直前、突然桑田に叩かれる関口がかわいそう(嬉しそう)。

「Relay~杜の詩」

モノクロの映像が織り成す穏やかなモノローグ

カメラに向かって一人歌っているだけでミュージックビデオとして成立してしまう桑田佳祐というパフォーマーの表現力に唸る。合間に挟み込まれるふとした仕草や表情にもそれを感じ取れる。ミニマルなサウンドを体現するようなモノクロの映像に、ビルが立ち並ぶ現代の都市の風景がカラーで挟み込まれていく。正装の5人がどことなく同窓会のような雰囲気なのも胸を打つ。

「ジャンヌ・ダルクによろしく」

渋いサザンが繰り広げる洒脱で熱いロックンロールライブ

年を重ねて一層渋みを増した架空のロックバンドにサザンがなりきっているかのようなMV。本人たち自身が紛れもなく最高のロックンロールバンドなのだが、単に一心不乱に好きなオールドロックを掻(か)き鳴らすのではなく、いつも何かを演じているかのような冷静な視点があるのもサザンの魅力なのだ。全編フィルム撮影されたという映像の質感も楽曲とぴったり。

「恋のブギウギナイト」

現代風にアップデートされたネオディスコサザン

極彩色のネオンサインに照らされ、多数のダンサーたちとともにディスコナイトを演出。ジャージ姿のメンバーも新鮮で、現代形にアップデートされたサザンのパーティが楽しめる。後半からは主題歌となったドラマにも出演していた小池栄子(「涙の海で抱かれたい~SEA OF LOVE~」以来、21年ぶりのサザンMV出演)と仲野太賀が登場し、さらに盛り上げてくれるのも見どころ。

「桜、ひらり」

楽曲が奏でる祈りを風景と言葉が伝える

日本海沿いを走る車窓からの景色に歌詞が流れるオフィシャルビジュアライザー。能登半島地震をはじめとする天災への畏怖と復興への希望を歌った楽曲に合わせて制作された。演出をそぎ落とした映像にリスナーそれぞれが思いを寄せることができ、楽曲の多面的な魅力を高める。終盤、今年のツアーの石川公演の会場となった石川県産業展示館が登場するのも心が温まる