音楽家としてのスタイルに共鳴するデザイン、そして“モノ”としての背景
アニメ映画『BLUE GIANT』で主人公の宮本大の演奏を担当し、トランペット奏者の黒田卓也さんをはじめNYを拠点とする日本人によるバンド〈J-Squad〉のメンバーでもあるテナーサックス奏者の馬場智章さん。彼が、音楽を聴くのは移動中が中心。〈テクニクス〉のイヤホンを渡すと、様々なジャンルを聴いた感想を教えてくれる。
「ジャズはしっかりベースが効いているし、トラップは曲全体の雰囲気がよく伝わる。自分の曲も細かいところまで聞こえますね。シンセサイザーとアコースティックで実際の楽器と同じように全然音が違うのがリアルです」
様々なジャンルを聴いたうえで使い心地を語るところに、馬場さんのモノ選びの丁寧さが透けて見える。
「小物も洋服も、友人が身に着けているもので気になったものがあれば、教えてもらって、お店まで足を運びます。きちんと話を聞いて買うことが多いですね。例えば〈カーニー〉のサングラスは〈Suchmos〉の鍵盤奏者のTAIHEIくんに教えてもらったのですが、デザインのインスピレーション源が音楽。これは〈カーニー〉と〈リップラップ〉のコラボでモデル名が“JAZZ Ⅱ”。そういう背景を知るのが好きですね」
モノ好きな人柄が覗くエピソード。そんな馬場さんは、ライブに合わせて変わる衣装も印象的。シックなスーツから男くさいワークウェアまで幅広い。同じ衣装にこだわる演者もいる中で、軽やかに衣装を変える。昔からいろんな洋服に袖を通してきたそうだ。
「2011年にボストンのバークリー音楽大学へ入学した時は〈ポール・スミス〉のシルエットが細くてビビッドなカラーリングの服をよく着ていました。そこから友達に影響を受けてルーズな格好をしたり、モード好きな子とよく遊ぶようになって〈ヨウジヤマモト〉や〈コム デ ギャルソン〉を買ったり。最近は〈エンジニアド ガーメンツ〉など武骨なスタイルが多いかもしれませんね」
衣装において、わかりやすく影響を受けたミュージシャンがいる。ベーシストのクリスチャン・マクブライドだ。
「レジェンドピアニストのチック・コリアのトリオの一員としてコンサートホールで演奏する時、Tシャツに淡いブルーのジーンズ、スニーカー、キャップと、とてもカジュアルな服装で。こんなラフなんだって。でも真夏の野外フェスではスリーピースのスーツを着てバシッと決めていて。そのスタンスがすごく格好いいなと思ったんですよね。例えばお客さんとの距離が近いジャズクラブにはスーツで、お客さんが緊張するような豪華な会場ではTシャツ。ギャップと振り幅と言いますか」
モノ選びも身だしなみも、自分の体験を大事にしてフィロソフィを築いてきた馬場さん。彼の目に〈テクニクス〉のイヤホンはどう映ったのだろう。
「アルミ素材が使われているシルバーのメタリックなケースが格好いいですね。よく身に着ける〈ベベット〉や〈市松〉のアクセサリーとも相性が良さそうです。〈テクニクス〉は音響が強い背景もあるから、こういう機械のようなデザインに惹かれますね」
〈テクニクス〉は1960年代から音楽シーンを支えるブランドであり、原音忠実再生をテーマにHi-FiオーディオやDJ機器などプロ仕様の製品を世の中に送り出してきた。イヤホンにもこれまで培った技術と思想が応用され、アーティストの音を忠実に届けることを第一に考えている。そんな背景を聞くと、頷き、馬場さんは口を開く。
「アーティストが込めたライブ感がすごく伝わってきます。僕自身、レコーディングの時もライブ感を大事にしていて、あんまりテイクは重ねないし、誰かがちょっと間違えたとしても全体として格好よかったらそれでいいと思っています。イヤホンによっては、細かい音の拾い方が特徴的なものもありますが、これは全体の響きが最もよく聞こえる。だからこそ、ジャンルを問わずに聴きやすいのもいいですね」
Technics《EAH-AZ80》
Hi-Fiオーディオ機器の開発で培われた音響技術の粋を注いだ最上位モデル。アーティストの作品がダイレクトに感じられるクリアな音が特徴。専用のアプリで、ノイズキャンセリングの調整やマルチポイント接続の設定も。充電ケースにはアルミ素材を使用。タッチセンサー部はレコードの盤面のような光の反射感があるデザイン。