行動力で切り拓いた、トリッキング道
バク宙をしながら体をひねったり、体を旋回させながら空中で回し蹴りをしたり──。トリッキングとは、中国武術やテコンドー、カポエイラなどをベースにダンスの動きを組み合わせ、難度の極めて高い技を繋いで魅せるアクロバットのこと。重力を裏切って繰り出される動きは、しなやかさと力強さを兼ね備え、アクション映画さながらの迫力だ。トリッキングアスリートのRikubouzさんがこのスポーツと出合ったのは中学生の頃だった。
「たまたまYouTubeで、トリッキングの動画を目にしたんです。小学生の頃から武術やスタント技術が学べるアクションクラブ教室に通っていて、日頃からインプットのためにアクロバット系の動画を見ていたからか、関連動画で流れてきて。それは、のちにトリッキングパフォーマーになるDAISUKEくんが練習中の様子を撮っている動画だったんですが、なぜだか『これなら自分にもできるかも』って不思議な自信が湧いてきたんです」
動画の動きを見よう見まねで練習し、その過程で次なる出合いへと繋がっていった。「動画を見ていると、DAISUKEくんたちがトレーニングをしている柔道場が自分の家からそう遠くないことが分かって。実際に彼らに会って、話してみたいと思ったんですよね。最初はかなりビクビクしながら行ったんですが(笑)、それがきっかけで彼らと一緒に練習をするようになりました」とRikubouzさん。持ち前の行動力によって仲間を得てからは、互いに技術をシェアしながらコミュニティの中で鍛錬を続けていった。
「みんなでああでもないこうでもないと言いながらトレーニングをしていくスタイルでした。特段先生がいるわけではなく、みんなで技術を磨いていくという日々でしたね」

そもそもアクロバットに興味を持ったのは、ジャッキー・チェンやジェット・リーらが出演する映画がきっかけ。ゆえに劇中のアクションとも親和性の高いトリッキングに惹かれるのはある意味必然だったとも言えるが、ほかの武術以上に彼がこのアクロバットにのめり込んでいったのは、表現の自由さが理由だったという。
「トリッキングって、もとは欧米の武芸の演舞で型を披露する際に、正方形のフロアの角から角に、何らかの技を繰り出しながら移動する競技がベースのようで、その部分だけが独立、発展していったのが今の形です。だから移動しながら繰り出せる技であれば極論なんでもあり。テコンドーの動きを持ってきてもいいし、ブレイクダンスの動きを取り入れてもいい。何回技を繋いでも、どんな繋ぎ方をしてもいいんですよね。自分が持ってきたい要素を取り入れて、好きなように表現できるところにグッときました」

技と技の繋ぎに、自分らしさを
なかでもRikubouzさんが大切にしているのは「技と技の“間”」。徹底的に難度の高い技を成功させることよりも、パフォーマンス全体のオリジナリティを追求することに力を注いでいる。
「トリッキングでは、技と技を10個くらい繋いで“コンボ”というものをつくります。その中では、技一つ一つの難易度や質のほかに、繋ぎ方も重要な要素になるんです。僕は技単体を極めるよりも、どう繋げていくか、その流れを考えるのが楽しくて。他に誰もやっていないような繋ぎ方を追求するのが好きですし、自分の生き方や自分自身を、トリッキングっていうフィルターを通していかに表現できるかというところに重きを置いています」
こうして繰り出される彼ならではの表現は、競技としてのトリッキングで評価されるのみならず、映像作品やファッションブランドのPR動画などのさまざまな領域へと展開の幅を広げている。
「競技大会は一対一のバトル形式で行われます。技やコンボの難易度や出来栄えなどの項目ごとに優劣がついて最終的な勝敗が決まるもので、5、6年前までは評価において難易度の比重が高く、オリジナリティを極めるのが好きな自分としてはなかなか勝ちきれなかったんです。最近はクリエイティビティが重視されるようになり、競技者としても勝てるようになってきたんですが、自分の使命としては、大会で好成績を残したり、後進を育てたりすること以上に、引き続き独自の表現を磨いて、トリッキングの魅力を伝える活動に注力することなのかもなと。ここ半年ほどはメディアに出たり、トリッカー向けに情報発信をしたりすることにも取り組んでいます。今後は、自分自身の表現を魅せるエキシビションの機会も作れたらいいですね」
求めるのは、美しいシルエットと着心地
手の先、足の先にまで意識を向けながらダイナミックに体を躍動させるRikubouzさんにとって、装いはいわば表現の一部。トレーニング中はもちろん、地続きの私生活においても、美しいシルエットを追求することには抜かりない。


「日常着もトレーニング着も自分にとってはあまり垣根がないので、服を買うときはそのまま動けるかどうかを気にします。高難度の大技を練習する日は短パンを穿いて体を軽くしたり、足先の動きを確認したいときはあえて裾を引き摺るくらい長いズボンを穿いたり。服のシルエットによって動きの見え方が変わるので、トレーニング内容に応じて適した装いを選んでいますね」
〈TOKYO DESIGN STUDIO New Balance〉のアイテムは、アスレチックウェアとしての機能性はもちろんのこと、デイリーウェアとして合わせられる、シームレスなデザインが魅力。着用いただいたナイロンのウィンドジャケットは、ウエストや裾についたドローコードを調整することで、シルエットを変容させることも可能だ。



「シルエットが変えられるから、いろんな練習に取り入れられそうです。薄くて軽いところや、前開きのチャックを締めて、さらにボタンで留められるところも動きやすくてありがたいです。普段はハットをかぶるのも好きなので、ハットとブーツのような重ためのシューズで締めて、スタイリングしてみたいです」

Rikubouzさんの次なる挑戦は、来る6月に自らが主催するトリッキングイベントを成功させること。トリッキングをまだ知らない人たちに向けて、魅力を伝えることが第一義だ。
「トリッキングには、トリッカーたちが集まって一緒に練習をしたり、バトルをしたりする“ギャザリング”というカルチャーがあります。トリッキングの魅力を体感するには絶好の機会ですが、競技者だけに閉じられていることにもったいなさを感じていました。そこでこのギャザリングをベースに、幅広い人が足を運べるイベントをやってみようと。例えば通常なら熟練トリッカーが行うバトルのジャッジを、ダンサーやフリースタイルバスケットボールの選手などにお願いしたり、ブレイクダンスとトリッキングの異種格闘技戦のようなエキシビションマッチをやったり。エンタメ性の高いイベントを準備しています。初めてのことだらけで目下悪戦苦闘していますが(笑)、乗り越えて、自分自身も一皮むけたいですね」

軽くて通気性に富んだ生地感に加え、伸縮性と柔軟性を意識したよりアスレチックなデザインを採用。その主力アイテムである「ライトナイロンリップストップシリーズ」は、透けるほどの薄さとライトな着用感が魅力。極薄の5デニールのコーデュラリップストップ素材を用いたアウターとパンツは、驚くほど軽く、さらに超強度を誇る。激しい動きにも対応する伸縮性を備え、撥水、透湿性も併せ持つ優れもの。
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