興味は、演じることから、作ることへ
「下北沢には、10代後半から20代前半にかけてよく来ていました。高校生の頃はファストフード店でバイトをしていたし、大学生になると〈本多劇場〉や〈ザ・スズナリ〉などのいろんな劇場に通って観劇していて。たくさんの刺激をもらった街なんです」
下北沢の街を散策しながら、そう振り返る山田由梨さん。幼い頃は子役として活動していた彼女がもともと志していたのは、俳優になること。物語の作り手の世界に足を踏み入れたのも、当初は「自分が出演する場所を、自分の手で作りたい」との思いからだった。
「大学では自主映画製作サークルに入りました。そこで初めて脚本を書いて、作品を撮ってみたんですよね。自分が書いた台本を演じてもらい演出したり、“自分はこんなふうに世界を見ているんだ”っていう視点を提示できることが面白かったし、チームで一つのものを作っていく過程もすごく楽しかったです」
新たな興味が花開いたのとほぼ時を同じくして出合ったのが、小劇場の演劇。大人計画やナイロン100℃などの劇団作品から大学演劇などの若手作品まで、さまざまな公演に足を運んだことがひとつのターニングポイントになる。
「映画やドラマ、商業演劇などと比べて、むき出しのエネルギーを感じたんです。作り込まれたセットはなくとも、セリフと動作で観客に想像を促し、いろんな世界を見せることができる。その自由さに惹かれて、自分もやってみたいと思うようになりました」

そんな折、「何かに突き動かされるように書き上げた」というのが、一人芝居の脚本。当時大学2年生だった彼女にとっては、初めての戯曲だった。「ふと夜中に設定を思い立ったんですよね。一気に書き上げた勢いのまま友達に電話をかけ、聞いてもらったら、上演したほうがいいって背中を押してくれて。それで周囲の手を借りながら、〈贅沢貧乏〉を立ち上げることになりました」。この『スーパーミラー』という作品を契機に、大学在学中から作劇と公演を重ねていくことになる。
「作品を作ることも劇団にすることも、もちろん大きな挑戦でしたけど、思い立ったら行動に移さずにはいられない性格で。勢いのまま、夢中で取り組んでいました」と当時を振り返る山田さん。そんな彼女の思いきりの良さは、その後の展開にも表れる。
「大学を卒業して劇団活動を本格化させるという時、まず下町に一軒家を借りたんです。『家プロジェクト』と題して、家の空間自体をまるごと舞台にした演劇を作ってみようと。演者の動きに合わせて、お客さんには部屋の中を移動してもらいながら物語の世界を体験してもらう試みで、1年間に3本ほど作りました。普通は劇場で公演を重ねてキャリアを積んでいくと思うんですが、どこか違う挑戦をしてみたかったんですよね。今振り返ると、思い切った決断でした」
演劇に没頭していく中で、いつしか“自分が出演する場所を作る”ことよりも、“作品自体を良くすること”にその照準は合うように。「自分は作劇や演出に徹した方がクオリティも上がる。“出る”ことには、徐々にあまりこだわらなくなっていきました」。

自分が抱える問いを、観客と一緒に考える
彼女が作品の題材とするのは、日常の中で抱いた違和感。性差による認識のズレ、社会の中での疎外感、カテゴライズされることへの抵抗など、結果的に今の社会をも投影するテーマを扱ってきた。「演劇は、自分がより深く考えたい、もっと知りたい、と思う事柄と自分なりに向き合うツールでもあるんです」と山田さん。例えば、昨年12月に上演した『おわるのをまっている』では、メンタルヘルスを題材に、ポップでユーモラスな物語を描き出した。
「自分ではコントロールできない体調の波があり、どう向き合えばいいかを考える必要がありました。一方で自分の弱い部分を前面に出すことは、勇気のいることでもあった。でも自分が弱っている時に同様の経験をした人の言葉に救われた経験があるので、孤独を抱える誰かの救いになればなと作品にしました」
題材を深掘るという意味では、演劇が、観客と作り手の生のコミュニケーションを内包するインタラクティブな表現であることも、ひとつの助けになる。
「上演後にロビーにいると、観終えて会場から出てきたばかりのお客さんが熱量そのままに感想を伝えてくださることもあるし、アフタートークなどで作品について一緒に掘り下げられることもある。時間と空間を共有できるところは、やっぱり演劇の醍醐味だなと思いますね」


自分らしく、心地よくいられる装いを
自分の内面から湧き上がるテーマを、深く考察しながら物語を作っていく山田さん。ゆえに装いは、思考を邪魔しない心地よさが肝心だ。
「たまには着るのに緊張するような装いで気分を上げることもあるんですが、普段は心地がよくて楽な洋服が一番です。家や近所のカフェで書き仕事をして、そのまま散歩に行くこともあるので、動きやすさも大切ですね。春夏はもっぱら、Tシャツにジーンズなどシンプルなコーディネートを好んでいます」
この日着てもらった〈TOKYO DESIGN STUDIO New Balance〉のナイロンジャケットは、アスレチックウェアとしての機能を携えながらも、日常着としてもフィットする洗練されたデザイン性が持ち味。軽やかな透け感が、春から夏にかけてのコーディネートにおいて大いに活躍しそうだ。



「着心地がいいし、スポーティだけどファッション性も高くて、すごく自分好みでした。普段のシンプルな格好にも合いそうだし、今日みたいにスカートに合わせても決まりますね。あとは軽いので、持ち歩くのにもすごくいい。劇場で稽古をする時など、温度調節ができるようなアウターとしてカバンに入れておきたいです」

演劇を軸に置きながら、近年は映像作品の脚本や監督業にも精力的に活躍の場を広げている山田さん。今後についてはどのように見据えているのだろうか。
「劇団で活動してきた中では、企画して脚本を書き、演出をして、宣伝方法を考えて……と、ゼロからお客さんに届けるところまで、すべての工程に携わってきました。あらゆることを内包しているからこそ、鍛えられた部分も大きいなと。だから今後はそれぞれの能力を抽出して、ドラマの脚本を書いたり、監督をしたりと、領域をもっと広げていきたいですね。お客さん自身が舞台上を自由に見渡せる演劇とはまた異なり、カットやズームで作り手が視点を限定するなど、ディテールにこだわれるのは映像の面白さ。映像作品では、まだまだ挑戦してみたいことだらけなんです」

半透明のシェル素材は、光を受けてよりシースルー度が増す構造で、それを意識して内ポケットのディテールも抜かりがない。その透け感をも計算した美しいデザインにも注目したい。また、インナーとシェルの間に隙間を作ることで、透け感に視覚的なグラデーション効果を生む、魅せるための服でもある。
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