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クリエイティブディレクター・チダコウイチが通う、目利きの店。神奈川〈TANTO TEMPO〉

店の雰囲気、品揃え、店主やスタッフの人柄。思わず足を運んでしまう理由は人それぞれ。目利きたちに聞いた、“信頼できる店”とは。

photo: Masanori Kaneshita / text: Shiori Fujii / edit: Chizuru Atsuta

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セレクター:チダコウイチ(クリエイティブディレクター)
店主:上野達郎

現在、東京都内と神奈川県秋谷との2拠点生活をしているのですが、その道中にあるのが〈TANTO TEMPO〉です。秋谷の家では料理をするのが楽しみの一つでもあり、ここでパスタや塩ケイパー、グアンチャーレ(イタリア式の塩漬け豚肉)などを買いに寄るのがお決まり。主にイタリアから厳選した食材が、決して広くはない店内にぎっしりと並んでいて、毎回ワクワクします。

手作りのお惣菜やスイーツも揃っているし、生ハムやチーズなどを量り売りしてくれるので、欲しい分だけ買えるのも便利。友人の家に行く前に手みやげを買いに来ることも多いですね。葉山には古くて良いお店がいくつかあるけれど、なかでもここは本物だと信頼している食料品店です。

20年近く通ってきましたが、実はこれまで店主と会話をすることもありませんでした。地元の常連客が親しげに話しているのが内心羨ましかったりして(笑)。ところが2021年の秋、その店主がお婿さんに店を譲って店頭からいなくなったんです。寂しいなあと感じていたら、なんと旅先で前店主に偶然出会って仲良くなって。今では友人となった彼とその家族が営んでいる店だと思うから、前よりいっそう好きになりました。

今はネットでの買い物が便利な時代。僕もスニーカーや本などをオンラインで買うことも多いし、ここで売られている本格的な食材だって、探せばECサイトで見つかると思います。だけど特に食べ物は、自分の目で実際に見て、選びたいという気持ちが強くある。

そして買うなら、店主自身がちゃんと選んでいると感じられる店がいい。よく“顔が見える関係”と言いますが、ネットでは築けない関係性が得られる、真心からの付き合い方ができる店に、通い続けていきたいと思っています。

神奈川 TANTO TEMPO 店内
食料品店での修業を経て、義父から店を受け継ぎ、品揃えを強化しながら営む現在の店主・上野達郎さん。

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