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梶雄太、フランク・リーダー、丸山智博が語る、冬のあたたかい服の話

カシミヤのセーター、古着のレザージャケット、ウールのマフラー……。肌寒さを感じるようになると、無性に着たくなる服がある。自分の中の冬の王道とも呼べる「あたたかい服」と、スタイルにまつわる話を、3人の大人たちに聞きました。

photo: Hiromichi Uchida / text: Shigeo Kanno, Minori Okajima / coordination: Masae Takanaka

梶雄太(スタイリスト)

あなたの秋冬の定番のスタイルを教えてください

スエットとデニムは10代から着ていて、20代に冬のコートに夢中になり、それが30代になった時に合わさって定番になっていったように思います。冬のスタイリングで特に参考にしている人はいないですが、小説家の吉行淳之介の洋服との距離感は好きですね。

そのスタイルに欠かせない、「あたたかい服」はなんですか?

〈フルーツオブザルーム〉の肉厚なスエット。〈ジョシュアエリス〉のカシミヤのチェックマフラー。〈ウィルダネスウェア〉のメリノウールソックス。〈ザ・ノース・フェイス〉のヒマラヤンパーカ。これらの品々は、どれも群を抜くあたたかさで、かれこれ十数年着続けています。出会い方はそれぞれですが、極寒のロケ地に行く時に防寒具として購入して、その後普段使いとなるパターンが多い気がします。

着ると心があたたかくなるような、思い入れのある服はありますか?

高校3年生の時、当時から代官山に路面店がある〈アー・ペー・セー〉で買ったピーコート。初めて買ったアメカジじゃない海外ブランドのアウターだったので、そのことを少しだけ覚えています。あれから30年以上経った今も、普通に着られるとは思いもしませんでした。洗練されたベーシックさがあって好きなんです。

〈A.P.C〉のピーコート
〈アー・ペー・セー〉のピーコートは、高校3年生の時に購入し、30年以上経った今も着ている。〈ジョシュア エリス〉のチェック柄マフラーを首に巻いたら冬スタイルの完成。

フランク・リーダー(FRANK LEDER デザイナー)

あなたの秋冬の定番のスタイルを教えてください

ベルリンの厳しい寒さにも耐え得る厚手のコートを毎日着ていますね。下にはシャツを一枚着るだけでいいくらい、あたたかなものを。田舎を散歩する時はミリタリーグリーン、都会ではエレガントなダークブルーを羽織ります。

そのスタイルに欠かせない、「あたたかい服」はなんですか?

前述の、1920年代頃のドイツ軍将校用コートをベースにした、バイエルンで織られた地厚なローデンウールのオフィサーコートが欠かせません。自分のブランドのものですが、色違いで持っているほどお気に入りです。あとはブラウングレーのチェコ製ヘリンボーン生地のウールパンツ、60年代の稀少なドイツ生地のウールシャツ、それとボヘミアで作ってもらった鹿革グローブなど。

ローデンウール素材のオフィサーコート
ヘビーなローデンウール素材のオフィサーコート。とにかくあたたかい。

着ると心があたたかくなるような、思い入れのある服はありますか?

〈フランク リーダー〉で展開するオーストリアのオーガニックシープウールの手編みのプルオーバーセーター。これは、ベルリン中に散らばる70代〜80代の老婦人たちによって編まれています。私が羊毛を運んで、完成品を集める時、いつもリビングでコーヒーを飲みながらの長話に誘われます。一緒に働いている人たちとのつながりは最高に素敵なもので、私の心にも大切なものです。

丸山智博(〈シェルシュ〉代表、シェフ)

あなたの秋冬の定番のスタイルを教えてください

カシミヤニットに、ウールのコートやダウンジャケット。重ね着が苦手なので保温性の高いものを選んで着るようにしています。

そのスタイルに欠かせない、「あたたかい服」はなんですか?

〈シャルベ〉のカシミヤマフラー。着け心地とカラー展開の豊富さが魅力的で、数年前にパリの本店で2色購入しました。

〈シャルベ〉のカシミヤマフラー
〈シャルベ〉のカシミヤマフラー。

着ると心があたたかくなるような、思い入れのある服はありますか?

〈L'armoire〉の一点物のパンツ。古着を再構築したデザインや手仕事であること、魅力的な作品性で穿くとパワーを感じます。