Visit

ランドマークが続々誕生! 港湾都市、台湾・高雄のウォーターフロントがアツい

台北に次ぐ台湾第2の都市、高雄がすごいことになっている。港周辺のウォーターフロントは整備され、キャッチーな巨大建築やアートスポットが出現。国内外からアツい注目を集める、メトロポリス高雄の“今”とは?

photo: MEGUMI / text: Ai Sakamoto / coodination: Kuo, Taiyen

20年以上の歳月をかけて再開発されたベイエリアへ

高雄と聞いて、あなたは何を思い浮かべるだろうか?台湾南部の玄関口?世界有数の港湾都市?経済や産業の面では台湾第2の規模を誇る高雄だが、正直、デスティネーションとしての評価は低く、これまで台北や台南に水をあけられてきた感は否めない。

だから今回「高雄がえらいことになっている!」と聞いてもピンとこなかったのが事実。しかし結論から先に言うと、あまりの激変ぶりに腰を抜かした。古びた工場や倉庫が立ち並ぶ、うら寂しい印象だった高雄港周辺は美しく整備され、ランドマークとなる巨大建築や古い倉庫群をリノベした複合施設があちらこちらに出現。かつて「文化の砂漠」と揶揄された高雄の姿はそこにはない。

そんな新生・高雄の象徴とも言うべき存在が2021年、愛河の河口付近に完成したポップミュージックの専用ホール〈高雄流行音樂中心〉だ。高低差のある波をイメージした白いメインビルディングが青い空に映えるさまは、アーバンでもありリゾート的でもあり。

せっかくなら、東はコンベンションセンター〈高雄展覽館〉から、西はMRT西子灣駅まで約4㎞続く海辺の遊歩道を歩くのがいいだろう。今年3月に開業した〈高雄港旅運中心〉や、橋桁が水平方向に回転する旋回橋〈大港橋〉、倉庫をリノベした複合アート施設〈駁二藝術特區〉など見どころがてんこ盛りだ。

体力に自信のない人はレンタサイクル(YouBike)か、路面電車で。高雄では、これらウォーターフロントを含む市内をぐるり一周するLRT(ライトレール)の約8割がすでに開業。今年末には全長22.1㎞、全37駅が開通し、一乗車30元(ICカード利用は10元)で楽しめるようになる予定だ。

もちろんウォーターフロント以外にも、見るべき点は多い。計画開始から15年の歳月をかけて開業した〈衛武營國家藝術文化中心〉を筆頭とする文化施設に、今後増えるであろう利用客を見越して次々とオープンする国内外資本のラグジュアリーホテル。ガストロノミックレストランも増え、22年版ミシュランも高雄に進出した。

もともと高雄は、西海岸には珍しい、海沿いの平地に開けた町。日本統治時代の都市計画により街並みが整備されたこともあり、道路は広く、台北に比べると林立する高層ビルの佇まいも余裕がある。そのあたりの再開発が不要なせいか、新しいものが続々と生まれる一方で、古くからの伝統や暮らしがきちんと残っているとも言える。

例えば、生まれ変わったベイエリアの目と鼻の先には人口2万6000人余りの小さな島、旗津があり、市民の足であるフェリーがのんびりと人々を運んでいる。

絶賛工事中の高雄駅をはじめ、これからもドラスティックに変貌していく高雄。はじめましての人はもちろん、かつて訪れたことのある人にこそ、再訪してほしい。絶対、腰を抜かすはずだから。

高雄の“今”を知れるスポット5選

高雄港の表情を大きく変えた巨大ランドマーク

〈高雄流行音樂中心〉のメインビルディング
ベイエリアを再開発した亞洲新灣區の一画に立つ〈高雄流行音樂中心〉のメインビルディング。六角形を基本にした外装が印象的だ。

10,000人が集まれる屋外イベントスペース、最大6,000人収容の音楽ホール、半屋外の展示空間を擁する複合施設、大小6つのライブハウスなどから成るポップミュージックの殿堂。2つの埠頭にまたがる各施設を全長735mの遊歩道が結ぶ。スペインのマヌエル・A・モンテセリン・ラホスと台湾の翁祖模建築師事務所による共同設計。個性的な建築群の形状は「海」から着想しており、それぞれ波、サンゴ礁、クジラ、イルカといったネーミングがされている。夕日の名所としても近頃人気。

シェフの経験と感性が生み出す新しいフレンチのカタチ

次のミシュラン1ツ星の呼び声も高い一軒。提供するのは2,480元の1コースのみ。メニューに食材の名前こそ書かれているが、その日の天候や素材の状態に応じて調整するため、訪れるたび新しい発見がある。シェフが経験を積んだフレンチをベースに、台湾料理やエスニックのエッセンスもプラス。適度なポーションなので、全8〜9皿も食べ飽きない。ペアリングにはオリジナルカクテルをぜひ。

5ツ星アーバンリゾートでインフィニティプールに興じる

その土地ならではの文化に根ざしたホテルを台湾全土に展開する承億グループ。初の5ツ星、そして都市型リゾートがこちらだ。24階に位置するインフィニティプールや、ミシュランの星付きシェフが腕を振るうフレンチ〈Papillon〉など話題性も十分。高雄市立図書館総館と空中回廊でつながることから、館内に書店や巨大ライブラリーがあるのも面白い。また全11タイプが揃う客室の中には、窓際に小上がりのある部屋もあり、海外でのホテルライフを快適にしてくれる。

軍用地を公園と国立劇場へと転用。大きな屋根が4つのホールを包み込む

2018年にオープンした、台湾南部初の国立パフォーミングアーツセンター。フランシーヌ・ホウベン率いるオランダのメカノーが設計を担当した。うねうねした一枚の大屋根の下に、オペラハウスやコンサートホールなど4つのホールが幹や根っこのように存在するデザインは、ガジュマルの木から着想。2,300枚以上の鉄板を張り合わせた自由な曲面が見どころだ。また屋根の下に広がる半屋外空間は、四方どこからでもアプローチできる。

25万トン級のクルーズ船が停泊できる、港町・高雄が誇る新しい海の玄関口

悠々と泳ぐクジラのような建築は、3月に供用開始したクルーズターミナル。なだらかな波の動きを表現した地上15階・地下2階建てで、アメリカのライザー+ウメモトと台湾の宗邁建築師事務所が共同設計した。1・2階に税関や出入国手続きを行うターミナル、上層階がオフィス、3階に一般の人も出入りできる展望台や遊歩道がある。