フォトグラファー・高木康行が行く!ローカル線に乗って秋田湯巡り旅

秋田北部の内陸部を貫く秋田内陸縦貫鉄道は、言わずと知れた湯巡り列車。温泉&鉄道好き写真家の高木康行さんが手ぬぐい片手に一人旅へ。

初出:BRUTUS No.858『温泉 愛』(2017年11月1日発売)

photo: Yasuyuki Takaki / text: Yuriko Kobayashi

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時間はかかるがやっぱり楽しい、各駅停車の旅

「おいしい料理が食べられる温泉宿専門だったんですけど」と言う写真家の高木康行さん。今でこそ地元密着型温泉ラバーだが、その温泉観を変えたのが鉄道だった。

「息子がローカル線が好きなんです。付き合って乗ったり撮影したりするうちに僕もハマって(笑)」
ローカル線が走る地域には素朴な暮らしが残る。そこにある温泉もまたしかりで、湯に浸かりつつ、昔ながらの風景や食文化、地方固有の空気を感じるのが好きだそう。

高木さんの憧れの一つが、秋田県北部の内陸を南北に突っ切る秋田内陸縦貫鉄道。北は鷹巣(たかのす)駅から南は角館(かくのだて)駅まで約94kmを結ぶ単線で、29駅中23駅が無人駅。しかも沿線にある温泉の割引券をセットにした「湯けむりクーポン」を発売するほどの温泉路線でもある。

田園や渓谷、森の中をのんびり走る列車で移動し、気が向いた駅で降りて温泉に入る。温泉&鉄道ラバーにとっては、夢の路線なのだ。

秋田県の阿仁合駅内
各駅停車は始発から終点まで2時間40分程度。なかには阿仁合駅止まりのものもあるのでご注意を。1日に1〜2本、急行も運行。

「ローカル線は1本乗り過ごすと1時間は余裕で待たなきゃいけないけど、徒歩圏内に温泉があったり、送迎があったりして最高!」

車窓にカメラを向けつつ、時刻表と温泉マップをチェックする。
「金沢温泉もそうだったけど、大衆浴場って農家さんの野菜とか、おばあちゃん手作りのお菓子が売ってたりして、いいよね〜。観光地の温泉には出せないしみじみ感っていうのかなあ。ローカル温泉にはご当地の魅力が凝縮されてる」

次回は冬に雪景色のなかを走る鉄道を撮影しながら、さらに温泉を巡りたいと高木さん。縦貫鉄道沿線の温泉マップは、チェックで埋め尽くされていくのだった。

前泊は足を延ばして、秋田が誇る名湯・乳頭温泉郷へ

黒湯温泉(乳頭温泉)

秋田〈乳頭温泉郷 黒湯温泉〉
前泊は足を延ばして、秋田が誇る名湯・乳頭温泉郷へ。乳頭温泉最奥部にある黒湯温泉は、茅葺(かやぶ)き屋根が残る風情が魅力。縦貫鉄道の始発、角館駅までは最寄りの田沢湖駅から新幹線で16分。

露天や泡風呂、寝湯。多彩なお風呂を源泉掛け流しで

花葉館(角館温泉)

秋田〈角館温泉 花葉館〉
露天や泡風呂、寝湯。多彩なお風呂を源泉掛け流しで。角館駅から無料送迎バスで20分。湯量豊富な源泉掛け流しを満喫。「前夜のにごり湯と変わって、クリアでやわらかい泉質がいい!」

現役マタギが暮らす山深い里で熊肉料理初体験!

マタギの湯(打当(うっとう)温泉)

秋田〈打当温泉 マタギの湯〉
現役マタギが暮らす山深い里で熊肉料理初体験!その名の通り、マタギ文化が残る集落に湧く温泉。食堂には熊鍋や地元産の米を使ったどぶろくも。阿仁マタギ駅から無料送迎あり。

朝から地元民が集う、超ローカル&ディープな温泉銭湯

金沢温泉

秋田〈金沢温泉〉
大きな山を背負った田園カットは内陸線ならでは。米どころの秋田内陸部を走る縦貫鉄道らしいカットは阿仁マタギ駅のホームから。「稲穂が黄金色になる秋、一面雪景色の冬もいいね」

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