時間はかかるがやっぱり楽しい、各駅停車の旅
「おいしい料理が食べられる温泉宿専門だったんですけど」と言う写真家の高木康行さん。今でこそ地元密着型温泉ラバーだが、その温泉観を変えたのが鉄道だった。
「息子がローカル線が好きなんです。付き合って乗ったり撮影したりするうちに僕もハマって(笑)」
ローカル線が走る地域には素朴な暮らしが残る。そこにある温泉もまたしかりで、湯に浸かりつつ、昔ながらの風景や食文化、地方固有の空気を感じるのが好きだそう。
高木さんの憧れの一つが、秋田県北部の内陸を南北に突っ切る秋田内陸縦貫鉄道。北は鷹巣(たかのす)駅から南は角館(かくのだて)駅まで約94kmを結ぶ単線で、29駅中23駅が無人駅。しかも沿線にある温泉の割引券をセットにした「湯けむりクーポン」を発売するほどの温泉路線でもある。
田園や渓谷、森の中をのんびり走る列車で移動し、気が向いた駅で降りて温泉に入る。温泉&鉄道ラバーにとっては、夢の路線なのだ。
「ローカル線は1本乗り過ごすと1時間は余裕で待たなきゃいけないけど、徒歩圏内に温泉があったり、送迎があったりして最高!」
車窓にカメラを向けつつ、時刻表と温泉マップをチェックする。
「金沢温泉もそうだったけど、大衆浴場って農家さんの野菜とか、おばあちゃん手作りのお菓子が売ってたりして、いいよね〜。観光地の温泉には出せないしみじみ感っていうのかなあ。ローカル温泉にはご当地の魅力が凝縮されてる」
次回は冬に雪景色のなかを走る鉄道を撮影しながら、さらに温泉を巡りたいと高木さん。縦貫鉄道沿線の温泉マップは、チェックで埋め尽くされていくのだった。
前泊は足を延ばして、秋田が誇る名湯・乳頭温泉郷へ
黒湯温泉(乳頭温泉)
露天や泡風呂、寝湯。多彩なお風呂を源泉掛け流しで
花葉館(角館温泉)
現役マタギが暮らす山深い里で熊肉料理初体験!
マタギの湯(打当(うっとう)温泉)
朝から地元民が集う、超ローカル&ディープな温泉銭湯
金沢温泉