新旧の魅力を抱え込む、台湾最古の街の懐深さ
中山駅から大稻埕のメインストリート・迪化街までは徒歩15分。ここは茶葉や乾物などを海外へ輸出する拠点として、台湾で最も早くに開けた場所だ。
19世紀から迪化街を中心に立ち並び始めた洋館は、今なお健在。最近は〈Take Five 五方食藏 大稻埕店〉や〈芙稻菓室 Fú Dàu Pastry Studio〉、〈杜甲 A-Ma 台北迪化店〉など、これら古い建物をリノベーションしたカフェやショップが注目を集め、コロナ禍の国内旅行人気を背景に、全台湾から観光客が訪れる。
ここ〈AKA Café〉の建物は日本統治時代の1920年に建てられた洋館で、台湾を代表する映画監督・侯孝賢(ホウ・シャオシェン)の作品『最好的時光』(邦題『百年恋歌』)の舞台になった場所。タンゴナイトなどのイベントも開催され、昔日の社交場のごとき雰囲気を醸す。
「歴史ある建物をうまく生かした、上質な空間。今度は誕生日などの記念日に、母と一緒に訪れてみたいです」。ノスタルジックな気分に浸りながら、デザートボックスに入ったペイストリー、迪化街名物のカラスミやビーフジャーキーをつまみ、中国茶を楽しむピピさん。
同じく迪化街で盛んに販売されている、ドライフルーツや漢方の風味を表現したというブレンドコーヒーも飲んで、視覚と味覚、嗅覚で大稻埕の昔と今を体験した。
ドリンク、料理、空間のすべてに、大稻埕の息吹が感じられる店〈AKA Café〉
大稻埕を代表する貿易商の洋館を改装して、2020年4月に開店。大稻埕の名物のお菓子が入った「甜點盒」は人気のメニュー。これをつまみながら中国茶、また昼からシャンパンやワインなどを楽しむ客も多いとか。バーのカクテルでは、カラスミのフレーバーが感じられるマティーニもあり。メニューの端々から、迪化街の粋が感じられる。
多様な個性が混ざり合う、大稻埕の強烈な引力
最近の大稻埕で目立つのが、ローカルの存在。若いオーナーの店が増え、地元民が集まるようになった。2019年開業〈披薩有張臉 Pizza Has a Face〉も、そんな店の一つ。
オーナー・陳捷甫さんは、台北で有名なイベントスペース〈濕地 venue〉の出身で、不定期開催のDJイベントを目当てに足を運ぶ若者が多い。また2022年開業のカフェ〈Riverside Darling〉も、大稻埕の人の流れを変えた一軒。
「周辺に古い洋館をリノベーションした店が多いなか、ほかと違う個性を出したかった」と、韓国のカフェをイメージした青を店舗全体に彩色する。オーナーの林威呈さんはストリートブランドを兼業し、その人脈を生かしたDJイベントを不定期開催。また、店内に飾られたポップアートを楽しみに訪れる客も多い。
鮮やかな青と浅煎りコーヒー、音楽とアートも楽しい場所〈Riverside Darling〉
店名が示すように、台北市の西端を流れる淡水河に面していて、晴れた日は窓から美しい夕日が差し込む。鮮やかなブルーが目を引く店内には、オーナーがさまざまな国で買い付けた雑貨やポップアート、レコードが陳列され、最新のカルチャーも満載。
スタイリッシュな空間でヒップホップを聴きつつ、浅煎りのコーヒーを飲んでいると、ここが古い街並みが残る大稻埕であることを忘れてしまうほど。迪化街から少し離れた立地で、いつも若者で賑わっている。
「今までの大稻埕にはなかった、ビビッドな刺激を受ける店ですね。伝統的なスイーツやB級グルメが楽しめる一方で、最新のカルチャーを体感できるカフェも存在する。台湾の新旧を感じられるここ大稻埕が、今一番、台北でホットな場所かもしれません。日本から友達が来たら、ぜひ連れて来たいです。近くには縁結びスポット〈台北霞海城隍廟〉もありますよ!」