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第5代国際サウナ協会会長のリスト・エロマーに聞く、世界のサウナ事情

現在は4,000人以上にまで会員が増えたフィンランドサウナ協会について、第5代国際サウナ協会(ISA)会長であるリスト・エロマーにお話を伺いました。

photo: Kenichi Murase / interview & text & edit: Yohei Kusanagi / editorial assistant: Yuji Nakano, Nao Uema, Kentaro Hashimoto, Orito Hamada / coordination: Ayana Kobayashi

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フィンランドサウナ協会とは?世界のサウナ事情を考察する

フィンランドサウナ協会は1937年に発足しました。サウナ好きなフィンランドの男性数人により、自分たちがサウナに入れる場所が欲しいという思いから発足。その後に戦争が始まり、1940年代後半くらいまで活動が頓挫しました。

この施設〈Suomen Saunaseura〉は、1952年のヘルシンキ・オリンピックと同時に建てられました。オリンピックの機会に造ろうと協会が盛り上がり、建設され、フィンランドのオリンピック委員会が来賓(らいひん)のもてなしに利用しました。サウナは最初からあった4室はそのまま。その後2室増やして、今は6室あります。

フィンランド〈スオメン・サウナセウラ〉サウナ室
サウナ室内。1952年当時のストーブが古めかしくも現役稼動。エロマー会長のお気に入りの席は窓のそば。

いつ頃会員が1,000人を超えたかは、覚えてはいません。1950年代後半から1960年代にかけて、会員が増え続けました。この頃、ようやく女性も会員として入り始めました。当初は男性だけで会員を構成していましたが、女性も会員に入ることで、一気に2,000人を超えました。

現在は4,000人以上に増え、「さすがに多すぎる」という話になっていますね。募集は、1年に1回、会員2名の推薦があれば入会を受け付けます。日本人では日本のサウナ経営者の2名だけが会員になっています。

このように会員が増える中で、協会の目的も明確になってきました。協会の使命は大きく2つあります。
(1)会員の人たちが良いサウナに入れるように、守り育てること。
(2)フィンランドのサウナ文化を保存すること、継承していくこと、観測や研究をしていくこと。

例えば〈Suomen Saunaseura〉には、フィンランドや世界で書かれたサウナに関する本が、溢れるほど収められた書庫があります。また、サウナに関する研究に助成金を出す制度も作っています。古いスモークサウナを保存するとともに、写真に残すことで守り育てていく活動もしています。機関誌も年に4回出しています。サウナに関する記事を書いてくださる方を厳選して声をかけ、執筆をしてもらっています。

私たちが誇れるのは、外部からお金をもらって活動を維持しているのではなく、自分たちの会員のお金だけで、それらすべてを成り立たせていることです。

フィンランド/ヘルシンキのラウッタ島
協会があるのはヘルシンキのラウッタ島。桟橋からは向こうにフィンランドの島々が見える。

また、私には各国のサウナ協会を取りまとめる国際サウナ協会の会長としての仕事もあります。ウクライナを援助するプログラム(Sauna Aid)を行ったり、ウクライナの兵士たちのためにモバイルサウナを贈ったりする活動もしています。寄付金の多くは、日本サウナ・スパ協会の力が大きく、感謝を申し上げます。

もちろん世界のサウナ事情も把握しています。今、日本がサウナブームなのは知っていますが、国際的な視点で見て、サウナは利用者数・利益で見ると、新型コロナウイルス感染症の影響も含めて、失速しているように感じています。

見た目の盛り上がりとは別に、事業者が経済的に潤っているかどうかを見ると、ヨーロッパではエネルギー危機の影響を受けて、利益が下がっています。その中でも、経済的に頑張っている国はドイツくらいです。日本でも、一時期閉業するサウナが相次ぎましたが、回復するには至ってないと思います。

ご存じのように、電気代が3~4倍、ガス代が4~5倍に上がっている状況の中で、ヘルシンキの最も古いサウナの一つ〈Arla(アルラ)〉(90年以上の伝統を誇るヘルシンキ・カッリオ地区の公衆サウナ)は今、閉業に追いやられました。

ドイツではエネルギー危機のため、国から「過剰なエネルギーを使うな」という制限が敷かれるのではないかと言われています。フィンランドもその影響を受けており、薪は2倍の値段になりました。こうした状況を協会としては注視しております。

私にとってサウナとは何か。私は、生後6ヵ月の時から、おばあちゃんの家でスモークサウナに入りました。人生ずっとサウナを楽しみ続けてきたし、国際サウナ協会の会長として12年、フィンランドサウナ協会には50年以上関わってきています。

サウナを通じてこれだけ世界の多くの人、日本のサウナを好きな人とつながってきました。そうした意味でもサウナはとても大切な場所です。どんな困難があろうとも、決してその火を絶やしてはいけません。

第5代国際サウナ協会(ISA)会長のリスト・エロマー
リスト・エロマーさん。

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