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『E.T.』や『グーニーズ』の世界観を再現。好きなものだけで埋め尽くされた、究極のガレージ

ここは西海岸?いえ、横浜のとある住宅地の一角です。まるでおもちゃ箱をひっくり返したような(いや、すべてのモノがカッコよく美しくレイアウトされディスプレイされているのだ!)〈ムーンアイズ〉ジェネラルマネージャー、角正和さんの夢のガレージを訪ねてみました。

初出:BRUTUS No.1006「Car Life」(2024年5月1日発売)

photo: Maruo Kono / text: Izumi Karashima

クルマはこするぐらい低い方がドキドキする

うわあ!その場所を目前にした時、圧倒されて言葉が出てこなかった。ガレージはクルマ好きにとっての夢、とはいえ、ここまでの空間を作り上げる人はなかなかいない。クルマはもちろん、アメリカン雑貨やポスターなど、夢と憧れがこれでもかと詰め込まれている。

「あれやこれや楽しんでいたら、これです。ルールはないので、小学生のままおじさんになったみたいな」角正和さんは横浜・本牧(ほんもく)にあるサザンカリフォルニア発祥のブランド〈ムーンアイズ〉のジェネラルマネージャー。自身の自宅兼ガレージを建てたのは10年前のこと。

「ギリギリの予算で建てたので、最初はフォード・ファルコンがポツンと1台あっただけなんです。電球一つ買うだけでドキドキしました」

ちなみに、取材時、ガレージに流れていたBGMはビースティ・ボーイズ。1980年代にタイムスリップしたような気分になる。「僕は2024年に47歳になったのですが、『E.T.』や『グーニーズ』が大好きで、その世界観を再現するうちにこうなっちゃいました(笑)」

〈ムーンアイズ〉ジェネラルマネージャー・角正和の自宅ガレージの作業台
作業台は以前使っていた食器棚を流用。「スナップオンを置きたかったけどこれがピタリハマって」。手前はアメリカのマクドナルドで使用されていたキッズ用椅子。

では、角さんの愛車について聞いていこう。まずガレージに鎮座する1961年式のフォード・ファルコン・セダンデリバリー。リアにパネル板が張られた商用仕様の稀少車だ。

「23歳の時に買いました。子供の頃から“働くクルマ”が好きで、この仕様のファルコンが日本に初めて入ってきた時に購入しました。ただ、買った時はドンガラで動かない。手を入れてようやく動き始めたのが33歳の時。10年かかりました(笑)」

青かったボディは塗装して艶消しのベージュ色に。SUGI SACK氏によるピンストライプ模様も入れた。「いちばんこだわったのは車高。ここまで低いセダンデリバリーは、世界中でこれだけです、きっと(笑)」

こんなにローダウンしていると車体の底をこすったりしないだろうか。「こするぐらいの低さが好きなんです。ただ、娘の保育園の卒園式にこれで行きたかったのに、マンホールに当たって壊れましたけど(笑)」

〈ムーンアイズ〉ジェネラルマネージャー・角正和の自宅ガレージ
アメリカン雑貨、ポスター、看板、スケボー、スニーカー、BMX、バイク、そしてクルマ。好きなものだけで埋め尽くされた究極のガレージは〈ムーンアイズ〉の広告や商品デザインを手がける角さんの発想の源。

クルマはあくまでもクルマ。F-150は家族車です

そして、『ワイルド・スピード』にも登場のフォード・F-150・SVTライトニング。2001年式。「2年前にeBayで見つけたので勤めている会社にお願いして輸入しちゃいました。実車を見たこともなかったので、日本に来た時、“デカいな!”って思いましたね(笑)」

実はこれ、スーパーチャージャーを搭載するマッスルトラック。マフラー2本は横出しで、エンジンをかけると地を裂くような重低音が響く。「ドライブスルーに入ったら、音がうるさくて注文が聞こえなかったっていう(笑)。アクセルを踏み込むと娘が喜ぶんですよ。ひゃーっ!もう一回やって!って(笑)」

え、家族みんなで乗るんですか?「もちろん。僕、クルマ好きですけど、クルマが恋人だとか、そんなことは全く思わない。クルマはあくまでもクルマ。いちばん大事なのは家族。家族みんなで乗って楽しむし、バリバリ働くクルマが好き。だからこのクルマも普段の足なんです」

〈ムーンアイズ〉ジェネラルマネージャー・角正和、フォード「F‒150」
“働くクルマ”フォード・F-150。Tシャツなど商品のタグ付けを自宅で行うため荷物が多く積めるのがいい。家族3人の時は前席のベンチシートに並んで乗車する。

角さんこだわりの3台目はめちゃめちゃシャコタンのホンダ・CR-X。1987年に発売されたモデルで、10年ほど前、格安で購入した。

「この時代のホンダ車が好きで乗ってみたかったんです。で、手に入れてすぐに魔改造。リアのサスペンション、ほぼないです(笑)。やっぱクルマって重心が低い方がカッコいい。カーデザイナーが描く最初のスケッチも車高が低く、それが理想の姿だなって。あと、子供の頃からの刷り込みもあるんですよね」

ホンダ「CR‒X」
ギリギリまで車高を落としたホンダ・CR-X。「F-150もこのくらいまで下げるのが理想です」。ボディにはワイルドマン石井氏によるピンストライプと文字も。

ヤンチャな姉の影響で、小学生の頃から『ヤングオート』と『チャンプロード』を熟読。クルマは低くあるべしと学び、ディーラーのチラシ広告を切り抜いては理想の低さに「改造」。でも、竹槍マフラーではなく、ポップなアメ車に魅せられるように。キッカケはポンティアック・トランザムだった。

「ボンネットに不死鳥が描かれたファイアーバード。ある時、それが故障して路肩に止まってて。リーゼントのお兄さんが出てきてクルマをガッと蹴り上げたんです。“うわ、悪!でもすげえカッコいい!”。小学生ながらシビレました。僕もこんなクルマに乗りたいなって」

〈ムーンアイズ〉ジェネラルマネージャー・角正和、ホンダ「モトラ」
レストアしたてのホンダ・モトラ。「10年前に新築祝いで友人からもらって。ジョッキーシフト(手でシフトチェンジする仕組み)にカスタムしました。楽しいです」