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全世界約80万人のバリスタの頂点は誰の手に?「Starbucks Global Barista Championship 2025」をレポート

全世界で約33,000店舗を展開するスターバックス。そのバリスタのトップを決める大会「スターバックス グローバルバリスタチャンピオンシップ 2025」が今年初開催された。6月9〜11日の3日間にわたり『BRUTUS』が現地取材した様子をレポートする。

photo: Naoto Date / text: BRUTUS

世界中の“パートナー”たちの情熱を伝えるために

スターバックスでは、従業員のことを一緒に働く仲間としての意味を込めて“パートナー”と呼び合う。

「スターバックス グローバルバリスタチャンピオンシップ」は、世界各国のスターバックスで働くそんなパートナーたちの技術や知識、そしてコーヒーへの情熱を披露し、継続的な向上を目指すために、今年初めて開催された大会だ。

日本、中国、EMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)、アジア太平洋地域、北米、ラテンアメリカ・カリブ地域での大会を勝ち抜いたチャンピオンたちに加え、世界6カ所の「スターバックス リザーブ ロースタリー」から選ばれたバリスタ計12名が、ネバダ州ラスベガスに集まった。

これまでも各地域での大会は開催されてきたものの、それらで勝ち抜いた代表を集めた世界大会は今年が初開催。ラスベガスで行われた大会の模様と結果をレポートする。

12名が技術と情熱を披露した、初日のセミファイナル

バーカウンター越しに審査員と対面しながら競技を行う日本代表の下出伸喜さんの様子。
バーカウンター越しに審査員と対面しながら競技を行う。日本代表の下出伸喜さんの様子。身振り手振りを含め審査員とのコミュニケーションも大切な要素だ。

大会は3日間。各地域での予選大会を勝ち抜いた12名が2日間のセミファイナルに挑み、勝ち抜いた4名が3日目のファイナルへ駒を進める。

2日間のセミファイナルの会場は〈マンダレイ・ベイ〉内のカンファレンスセンター。ステージには2つのバーカウンターが用意され交互に競技が行われていった。

種目は、ブラインドコーヒーテイスティング、ラテアートチャレンジ、コーヒーストーリーテリング、ストアラッシュ、シグネチャービバレッジの5種目。

ブラインドコーヒーテイスティングでは、競技者の前にスターバックスが扱う6種類の豆を抽出したカップが銘柄がわからない状態で用意され、テイスティングをしながら審査員に感じたフレーバーを説明、最終的に銘柄を選んでいく。

いくつかの競技ではエンターテイメント要素を加味されたものもあった。ラテアートチャレンジでは3回のチャレンジで描くモチーフ、使用するミルクの種類をピンボールのようなパネルで決めたり、コーヒーストーリーテリングでは、パネルを回転させ、サステナビリティやグローバルファーマーサポートなど、矢印が指したテーマについて自らが選んだ豆にまつわるプレゼンテーションを行なった。

とりわけユニークだったのはストアラッシュ。朝のラッシュアワーを想定して制限時間内にドリンク10種類を正確に作る競技だ。限られた時間の中で審査員をお客さんと見立て、コミュニケーションをとりながら、ドリンクを次々に作っていく。技術や知識もさることながら、店舗のオペレーションを大切にしているスターバックスらしい競技だ。

東京の「スターバックス リザーブ ロースタリー」代表である菅原孝宏さんは、スピードが求められるストアラッシュにおいても、マグをしっかりとぬぐってから相手に取っ手を向けて提供しており、コンペティションに参加していた他の国のパートナーからも賞賛の声があった。

全ての競技では、スターバックスの店頭で扱っているものしか使えないというルールがある。最後の競技シグネチャービバレッジも、限られた材料の中で、自国らしさ、自分らしさを表現する競技者が多かった。日本から出場した下出さんと菅原さんは、柚子やほうじ茶といった日本でのみ展開される素材を使ったドリンクを提案していた。

コーヒーへの知識、技術はもちろんのこと、すべての競技者が大切にしていたのは、カスタマーとのコミュニケーション。スターバックスらしさとは何か、全員がその考えを落とし込んで取り組んでいるのが印象的だった。

セミファイナルが終了、駒を進めるのは?

2日間のセミファイナルが終了。最後にはファイナリストを決める結果発表が行われた。

ステージには競技を終えた12名のパートナーが踏み揃った。ファイナルには4名が進めるが、2名は各地域代表、2名は「スターバックス リザーブ ロースタリー」代表から選ばれる。

ファイナルへと駒を進めたのは、日本から下出伸喜さん、EMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)代表のスマヤさん、「スターバックス リザーブ ロースタリー」からは、東京の菅原孝宏さん、上海のチコさんだった。

日本から出場した2名がともにファイナルへと進むという快挙。4名は3日目最終日のファイナルに挑むことになる。

初代チャンピオンは誰の手に?

会場ステージ
約1万4000人の観客が見守る中、ファイナルは行われた。

3日目のファイナル、会場は初日よりも大きな〈トーマス&マック・センター〉に移った。会場には応援団に加え、全米のストアマネージャーが揃い、会場は熱気に包まれる。さながらスポーツ観戦のような雰囲気だ。

ファイナルの競技は、ラテアートチャレンジとシグネチャードリンク、ブラインドコーヒーテイスティングの3種目。基本的には1日目、2日目に競ってきたものと同じ内容だが、ラテアートはくじ引き要素がなくなり、ミルクは2種に絞られ、モチーフは自分で選ぶことができるなど変更点もあった。

ステージ上のバーカウンターで審査員と対面しながら行うという点は同じだが、全米のストアマネージャーが見守るなかで、初日よりも観客とのコミュニケーションがより重要となった。中でもスマヤさんや下出さんは、流暢に英語を話しながら、さながらコールアンドレスポンスのように観客との一体感を生み出していた。

特に印象的だったのは、下出さんによるシグネチャードリンク。プレゼンテーションで「心を込めて、相手のことを想って作った一杯は必ず相手の心に後味として残る」と語った際には、会場には大きな拍手が鳴り響いた。技術の高さだけではなく、おいしい一杯を届けるためのストーリーの大切さを会場の全員が感じた瞬間だった。

頂点に輝いたのは日本代表!

ファイナルは、4名が3種目ずつ行い1時間程度で終了した。4名の審査結果を集計し、いよいよ結果発表へと進む。

スターバックスは、全世界で80万人のパートナーが働いている。コーヒーへの知識、技術、コミュニケーション力、オペレーション能力、さまざまな能力が必要とされるバリスタだが、その頂点がついに決まる。

ステージに4名が再び揃い、バイスプレジデントのティナ・ブラントさん、ダイアン・テリーさん、シニアバイスプレジデントのアーロン・コランスキーさん、シニアマネージャーのセルジオ・アルバスさんらが結果が記載された紙を手に登壇する。

「スターバックス グローバルバリスタチャンピオンシップ 2025」初代のチャンピオンは、日本代表の下出伸喜さんだった。2位は、EMEAのスマヤさん、3位には菅原孝宏さん、4位は上海のチコさんとなった。

初開催にして日本からの出場者が優勝と3位入賞。二人の努力はもちろんのこと、日本のスターバックスのパートナーのレベルの高さが証明された瞬間だった。

大会を通して、日本から出場した2人はそれぞれの考える「スターバックスらしさ」を体現していた。下出さんは、アジア予選を勝ち抜いて来た技術の高さはもちろんのこと、味わいだけではないコーヒーの魅力を伝えることで審査員、会場の心を掴んでいた。菅原さんは、カスタマーに対してのまっすぐな誠実さが印象的だった。例えばストアラッシュで抽出したエスプレッソの品質が完璧でないとき、時間がないにも関わらずそれをあえて出すことはせず「お客様に一番おいしいコーヒーを届ける」ために再度抽出を行っていた。

優勝者は、さらなる知識向上のため東京以外の世界5ヶ所の〈スターバックス リザーブ ロースタリー〉への訪問が約束される。また、出場者12名も大会終了後、シアトルの本社へ訪れ、スターバックスがブランドとして大切にしてきたものを肌で感じられる機会を得た。

無事に3日間を終えた大会。スターバックスのパートナーたちがいかにコーヒーへの情熱、技術や知識を持っているのかがわかる大会となった。そして、大切なのは入賞した4名を含めた12名が今後、店舗でその技術や知識を広めていくということ。店を訪れたカスタマーによりおいしい一杯が提供できるように還元されていくという意味で、この大会が次なるスタートの第一歩となるはずだ。