クローズドなローカリズムを開かれたポップスとして成立させているのがサザンのすごさです
僕と同じ世代の人に多いと思うんですが、母親がサザンの大ファンだったんです。「桑田さんの野球チームと試合をしたことがある」とか「Shibuya eggmanでのシークレットライブを観た」とか、いろんな自慢話を聞かされて育ちました(笑)。
なので、子供の頃からサザンの曲は家でよく聴いていたし、テレビで観ても、いい意味ですごい異物感を放っていたのを覚えています。例えば「マンピーのG★SPOT」にしてもストレートに下卑たイメージがありつつも、歌詞カードをよくよく読み込めば、そこに隠されたインテリジェンスとボキャブラリーのすごさに圧倒される。
今思えば、その蠱惑的なアンビバレンスを子供ながらに楽しんでいたように思います。そして初めて自分のお金でサザンのアルバムを買ったのは1998年、僕が中学2年生の時でした。ベストアルバム『海のYeah!!』と当時の最新アルバム『さくら』を買って、めちゃめちゃはまりました。
毎日犬の散歩をする時にも聴いていたくらい(笑)。桑田さんの歌は、聴くとつい自分も歌いたくなって、歌ってみると口が気持ちいいんですよね。それは桑田さんの、語と語をつなげて歌うリエゾン的な歌唱がもたらすものでもあるんですが、今回のアルバムでもその独自のリエゾンは炸裂していましたね。
「史上最恐のモンスター」での「お怒りになった龍神(りゅうじん)さん お止めになって雷神(らいじん)さん」のところなんかはすごく気持ちがいい。考えてみると、サザン以前には日本語をこんなふうに独自のリエゾンで歌う人っていなかったんじゃないかな。今も誰も真似できない。

それと、桑田さんの作詞といえばルビ使いの巧みさですよね。このいわゆる“ルビ芸”には実は僕もかなり影響されているんです。
「分析室」と書いて「キャビネ」と歌ってみたり(cero「Tableaux」)、そこはもろに“桑田佳祐からの影響”だったりします(笑)。
それはさておき、今作での究極のルビ芸といえば「盆ギリ恋歌」ですよね。「ヨシオんとこ」と歌う箇所にはルビで「夏倶楽部」と店名がふられている。やられました。これは桑田さんにしかできない芸当だなと。
クローズドなローカリズムを感じさせながら外向けに開かれた普遍的なポップスとして成立させている。これほどの規模感のバンドがいまだに“俺たちの街のバンド”であり続けているっていうのはすごいことですよね。
今作は、先人へのリスペクトと次世代へとつなげる思いを表現しながら、サザンが今も変わらず社会や時代とがっつりコミュニケーションを取り続けているバンドだということを感じさせてくれるアルバムでもありました。もちろんプロテストソングとしての切れ味も健在で。
それを誰もが入ってこられるような入口の広さで表現するという気概、そのアティテュードの強さは、僕を含め今のミュージシャンに少し欠けているところなのかもしれません。
Hit Me Lyric
サザンビーチでナンパするなら ヨシオんとこ(夏倶楽部)で Show!!
「盆ギリ恋歌」より