未来の譜面には「KEISUKE KUWATA」と記されるべき、唯一無二の歌唱法
4歳の頃から、両親の影響で、家でサザンの曲を歌っていました。小学校5年生の時にはお願いして『キラーストリート』を買ってもらって。歌詞カードがボロボロになるまで聴いてたんです。今でも新曲を楽しみに待っています。そんなRIKU少年も(笑)のちに歌手になり、今年で31歳。我ながら感慨深いです。
待望の『THANK YOU SO MUCH』は、さまざまなジャンルの音楽性を取り入れ、言葉遊びや風刺、時にセクシーな歌詞……。全体的にバラエティ豊かで、これまでのサザンの音楽性が集約されていると感じました。
遊びの部分も多く、誰もが楽しめる一作になってますよね。ただ、アルバムを全部聴き終えた後、最後の「Relay〜杜の詩」に思うところがあったんです。現代の暗いニュースや自然環境の変化を描きながら、“こうした方がいいんじゃないの?”というメッセージが盛り込まれている気がしました。重いテーマの曲ですが、桑田さんとサザンが、今一番伝えたいことなんじゃないか。
そんな気持ちを多くの人に投げかけるために、アルバム全体をポップでリラックスしたものにしたんじゃないかと思いました。それと「Relay〜杜の詩」は、現代の社会を憂うだけではなく、明日を担う若者、次の世代へのエールになっているように感じたんですよね。僕らの世代には、すごく励みになる歌だと思います。

桑田さんの次世代への気持ちは「歌えニッポンの空」からも同じように感じました。若かりし日の故郷と恋愛を回想するような歌詞。桑田さんの世代は、日本の華々しい頃はもちろん、現代のように苦しい時代も経験されている。ただ過去をノスタルジックに語るだけではなく、楽しかった頃の思い出を通じ、日本の魅力や力を伝えようとしてくれているように受け取っています。
「歌えニッポンの空」をはじめ、桑田さんは数々の赤裸々なラブソングを書かれていて、そこに原由子さんがコーラスまでされていて。そんな関係性も含め、ある意味でサザンは日本最強のロックンロールバンドだと思います(笑)。
そして、歌唱法的な部分でどうしても言いたいのが「ジャンヌ・ダルクによろしく」の「夢で終わりたくない ay Yay Yah」というライン!語尾を引っ張って「ヤイヤイヤイ」とつなげていくような歌い方は「ボディ・スペシャルⅡ(BODY SPECIAL)」でもお馴染みですけど、僕は子供の頃から“サザン節”と呼んできました。
自分自身も歌手になり歌唱法を勉強する中で、こういう歌い方をするのは桑田さんだけだと気がついて。完全にオリジナルの歌唱法ですよね。今後こういう歌い方をする時、譜面に「KEISUKE KUWATA」と記載した方がいいと思います!(笑)
日本語における新しいメロディと歌詞を生み出してきた桑田さんですが、キャリアを重ねた今でも音楽に対する探究心は10代の頃のままじゃないかと思います。
Hit Me Lyric
君と戯れた夏の 思い出を抱いて 麗しMy Hometown
「歌えニッポンの空」より