サザンならではのメロディとリズムを響かせる、言葉選びのセンス
小学校4年生の頃に、母親が車でサザンの企画盤『すいか SOUTHERN ALL STARS SPECIAL61 SONGS』のカセットテープを流していて聴いたのが、初めてのサザンだったと思います。
「勝手にシンドバッド」の「今 何時?」って歌詞を、子供ながらに変な歌だな……と思ってしまったんですけど(笑)。そんな言葉のイメージなんて一瞬でかき消すくらいに、メロディがカッコよくてアツい!と思ったのを鮮明に覚えています。
その後、中学に入ってアルバム『世に万葉の花が咲くなり』あたりから、サザンを追いかけ始め、『茅ヶ崎ライブ2023』も友達に誘われて、思わず茅ヶ崎まで行ってしまったほど。
最新アルバムも曲がバラエティに富んでいてめちゃくちゃ素晴らしかったです。単純に桑田さんの声がずっと見事に保たれているのもすごいし、幸せだと、聴きながら感じていました。「暮れゆく街のふたり」の冒頭もそうですが、「夏の懈怠(けだい)」という歌詞で「夏」が一言出てくるだけで、ザワッと一気に景色が変わるのが、サザンの曲だなと思いますね。

「風のタイムマシンにのって」でも、「江ノ島」の一言で、同じようにサザン特有の海の情景がぱっと広がる。これはサザンが長年、江の島や湘南を歌い続けてきたからこそのものですよね。この曲に出てくる「和賀江(わかえ)」など、これまでも歌詞で初めて知った地名がたくさんありました。
もう一つ、メロディに英語のような響きの歌詞を当てるのがサザンの曲の特徴であり、今回も面白い日本語表現が印象的でした。「桜、ひらり」は、歌詞の内容にもジンときましたが、曲をシメる「柳暗花明(りゅうあんかめい)」も、英語のような不思議な響きに聞こえて面白いなぁと。「風のタイムマシンにのって」の「波濤(はとう)は北斎」もそうですね。
それと「史上最恐のモンスター」の「雷神(らいじん)さん」も「ライジング・サン」なのかなと。「悲しみはブギの彼方に」の最初の「雨が降らないと~」のくだりの響きも抜群に気持ちいいですね。しかも、これが冒頭に来る歌詞の強さがすさまじい。
サザンで知った可能性が高い「永遠(とわ)」という言葉は桑田さんの歌詞によく登場しますが、今回も「歌えニッポンの空」にありました。これだけ頻出するってことは、歌った時にメロディやリズムにうまく馴染んでハマるからなんじゃないかと思います。僕もヤンキーとUFOが好きで漫画に何度も出しちゃうんですが、少し躊躇(ちゅうちょ)しても、最適だと思ったら考えずに描くようになりました。
そして最終曲「Relay~杜の詩」は神宮外苑などの再開発問題にも目を向けた歌。サザンのような偉大なミュージシャンが「分かり易い言葉で どなたか教えてくれませんか?」と、こういうメッセージを込めた歌を歌い続けてくれることを頼もしく感じます。
音楽に目覚めた幼少期から、ずっと同じバンドとして存在し続けてくれる。さらに、いまだに新しい発見をもらえるのが嬉しいです。
Hit Me Lyric
雨が降らないと 米食えない 早く寝ないと 夢見れない
「悲しみはブギの彼方に」より