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柳宗理「BLACK COLLECTION」が語る、日本モダニズムの核心

BEAMS〉が注目する国内の優れたものづくりとその背景にある物語を紹介する本連載。民藝、雑貨、アートといった日本の豊かな文化的資源を現代の視点で再発見する。第1弾は、柳宗理デザインの名作を黒で仕上げた「BLACK COLLECTION」。時代を超えて愛されるデザインの新たな魅力に迫る。

text: BRUTUS

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不変的な強さのある「黒」で、装いを新たに

「デザインとクラフトの橋渡し」をテーマに、日本各地から集めた衣食住のアイテムを揃える〈BEAMS〉発のレーベル〈fennica(フェニカ)〉が、新たな特別コレクションを提案する。「バタフライスツール」の製造でも知られる山形県の木工メーカー〈天童木工〉とタッグを組み、ポップアップストア《SORI YANAGI DESIGN BLACK COLLECTION》を4月21日(月)から〈ビームス ライフ 横浜〉にて開催。本コレクションを先行発売する。

特筆すべきは、コレクション名にもある「ブラックカラー」。不変的な強さのある黒はこのプロダクトに合うという理解から生まれた。黒をまとった柳宗理デザインの椅子を目にすると、驚きとともに不思議な既視感を覚える。見慣れた形に新たな装いを与えることで、デザインが新たな表情を見せるのだ。

今回のプロジェクトは、木目の表情を引き立て、空間に調和する落ち着いた印象を与える「黒」の魅力を探る試みでもある。たとえば、ダイニングテーブルのサイドに注目すると、黒を薄く塗ることで重なり合う木目が浮かび上がっている。これは、世界有数の成形合板技術を誇る〈天童木工〉だからこそ可能になった表現で、木に対する深い理解があって成し得る技術だ。

普遍性を宿した、柳宗理のプロダクトの魅力

「柳宗理」と聞いて思い浮かべるのは、自然な木の風合いを生かした家具だろうか、洗練された食器だろうか、あるいは1964年の夏季東京五輪で使用された聖火ランナーのトーチホルダーだろうか。

柳宗理が手掛けた作品は工業製品や公共設備など、ここでは書き記せないほど幅広い分野にわたる。戦後日本、まだ“デザイン”という言葉すら一般には普及していなかった時代から、インダストリアルデザイナーとして、優れたプロダクトを世に送り出してきた。

機能性と美しさから生まれる「普遍性」を追求した柳宗理の根底には、民藝に対する眼差しがあった。民藝運動の創始者・柳宗悦を父に持ち、1977年には自らも日本民藝館の館長に就任。「民藝」を過去の美しさとせず、現代の創作に生かすことを訴えたという。

手仕事や民藝を俯瞰しながら、現代の“使い手”の視点に立って生み出された作品の数々は、今も色褪せない本質的な強度を湛えている。そんな時代を超える価値を持つ柳宗理デザインだからこそ、黒という新たな装いも自然に受け入れられるのだろう。

さらに興味深いのは、ポップアップ開催地である横浜の街が、柳宗理デザインで彩られていることだ。横浜市営地下鉄のシンボルマークから野毛山公園の遊具まで、日常に溶け込む彼の創造力が身近にある場所。この地での開催にも、深い意味がある。

木目と黒、光と影が織りなす対話を実際に体験するには、言葉より目と手が必要だ。5月6日(火)までの限定開催。デザインの新たな一面を、自分の五感で確かめてみてほしい。

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