Visit

大地の恵みを感じる、西オーストラリア〜後編〜

広大な国土を持つオーストラリアのうち、3分の1もの広さを占める西オーストラリア州。その大地の恵みの集積を味わうことのできる州都パースを起点に移動する。北へ向かうと茫々たる乾いた大地に、突如まばゆいピンク色の湖が現れる。南部のマーガレットリバーでは冬は雨に恵まれるため、ユーカリの巨木が森を作り、空気を清めている。目にする自然の圧倒的な存在感。ダイナミックな大地の変化に、引き寄せられるようにして旅をする。
前編の「大地の恵みを感じる、西オーストラリア〜前編〜」も読む。

Photo: Taro Hirano / Text: Toshiya Muraoka / Coordination: Ako Savage / Special Thanks: Royal Aero Club

大都市の近郊に広がる、肥沃な大地の恵み。

大地の変化、という意味において旅の拠点たるパースは象徴的な都市だ。
スワン川とその支流であるカニング川が合流する地点であり、街全体を見下ろすように丘がある。冬には雨が降り空気を潤すために、その丘には自然の森があり、都市に隣接する公園・キングスパークとして残されている。

400ヘクタールもの敷地内には、およそ3000もの西オーストラリアの固有種が植えられ、ボタニカルガーデンとして整備され、大地の多様性を知ることができる。
アボリジナルの人々に精霊の宿る場所と考えられているバオバブまで移植されていた。太陽の動きに近い時間で活動をしているパースの人々は、出勤前、日の出の頃にやってきてランニングをしながら、都市に隣接する自然を謳歌している。サンセットの時間には芝生に寝転び、夕日が街を染めるのを眺めていた。

ワインの一大産地であるマーガレットリバー
パースの南部に位置するマーガレットリバーもワインの一大産地として知られている。〈Barnyard1978〉はわずか4ヘクタールの小さなワイナリー。

1829年、イギリスの入植によって西オーストラリアの開拓は始まる。
パースは首府として建設され、20㎞離れたスワン川の河口はフリーマントルという港町に、上流の肥沃な大地はスワンバレーと呼ばれて農園として開拓された。それぞれの街の役割はおよそ200年を経過した現在もそれほど変わっていない。
パースには政治経済の中心として高層ビル群が立ち並び、フリーマントルには巨大な船舶が寄港している。

パースから足を延ばして、大地の恵みを確かめに行く。

パースから車で30分の距離にあるスワンバレーは現在、大小50を超えるワイナリーを抱える産地に育っている。
歴史ある大きなワイナリー以外にも、小ロットの生産者も多く、そのうちの一つ〈lancaster〉でテイスティングをすると、目の前のブドウ畑を指して「その一列で造ってる」と言われた。

醸造家が小さな畑ごとに分かれ、数人が集まって〈lancaster〉ブランドを作っているのだという。小ロット生産のいわばクラフト的な考え方には、多様性を重んじる風土が影響している。1950年代に始まる移民政策によって、スワンバレーにもヨーロッパからの移民が増え、多様なワインへの試みが花開いた。
〈lancaster〉のような小さなワイナリーのワインは、流通に乗らず、現地でしか飲むことができない。

マーガレットリバーのユーカリの森
マーガレットリバーのボラナップにある、カリというユーカリの森。浄化作用なのか空気が清らかに感じられた。

大地を味わう「テロワール」という意味においては蜂蜜も思想を同じくする。
スワンバレーにある専門店〈THE HOUSE OF HONEY〉では広大な西オーストラリア各地で採取された蜂蜜を販売しているが、中でも蜂蜜の一つの指標である抗菌活性力(TA)が世界最高峰のジャラやカリなど、ユーカリの森で採取された蜂蜜が揃っている。

TAは森の健康状態に左右されるという。つまり、森の豊かさの印だった。そのユーカリの森を見るために、3時間のドライブで南部のマーガレットリバーへ向かうと、パース近郊とは異なる風景が広がり、ユーカリの巨木が静かな空気を湛えていた。
北の赤い荒野と南部の森と。パースはその合流地点にあって、多様な大地を祝福している。

穏やかな風が吹くパースの街を歩く。

都市に隣接する公園としては世界最大級、ニューヨークのセントラルパークよりも広いキングスパークは、パース市民の憩いの場。

スワン川越しに街全体を眺めることができる。西オーストラリア各地域のワイルドフラワーが植えられ、いわば植物のショーケースに。必然、ワライカワセミやマグパイなど、多くの野鳥が暮らす楽園にもなっている。

市民の憩いの場でもあるキングスパーク
アレックス・ホテルのカフェスペース
図書館や美術館に近く、商業エリアの端という好立地ながら、余裕のある空間構成のシティホテル。
1~2階部分は、宿泊者の共有スペースとなっていて、24時間開放している。日中はカフェとしても営業。朝食には焼きたてのスコーンも並ぶ。ビジネスで利用するにも使い勝手がいい。
アレックス・ホテルの入口とベッドルーム
西オーストラリア州
●アクセス/ANAの成田〜パース直行便で約10時間。
●通貨/1オーストラリアドル=約¥66.0(2020年3月末現在)。
●時差/−1時間。
●気候/四季があるが、季節は日本と反対。平均気温は夏(12月〜2月)が30℃前後。冬(6月〜8月)が20℃前後。
●渡航制限情報/オーストラリア人および永住者とその近親者以外は入国禁止(2020年3月末現在)。
●その他/ピンク・レイクを見る遊覧飛行ツアーも。