横山剣が語る「LEHUA, MY LOVE」
「説明からこぼれ落ちる部分こそが達郎さんのソウル」
『SOFTLY』には好きな曲がいっぱいありますが、このイントロからつかみのある「LEHUA, MY LOVE」が一番好きですね。古くからのファンも納得する達郎さん特有の空気感と、真新しさとの両極が見事に溶け合う素敵な曲です。
安定したブランド力がありながら、どこか攻めている感じこそが「ロックンローラー山下達郎」の魅力だと思いますし、そんなところにもシビれるわけですが、達郎さんの音楽の素晴らしさはどんな美辞麗句を用いても語り尽くせません。むしろ説明からこぼれ落ちる部分こそが達郎さんのソウルであり、特異性。この曲もイントロからそれを感じました。
僕が10代、20代の頃は達郎さんの曲がディスコでかかることが多かったのですが、アイズレー・ブラザーズばりの名曲「DOWN TOWN」を初めて聴いたのもディスコでした。DJに詳細を訊き、シュガー・ベイブの『SONGS』と同時に、達郎さんのソロ1枚目『CIRCUS TOWN』を買いましたが、とりわけ「WINDY LADY」を聴いて「これこそが俺の探し求めていた音楽だ!」と。
今でもその興奮が色褪せることはありません。そしてスピナーズのようにスムーズでメロウでソウルフルでサニーサイドな名曲「LEHUA, MY LOVE」も然り。2回目のサビの終わり、「I LOVE ONLY YOU」から間奏に流れ込むところで、コードが変わる瞬間にたまらなくゾワゾワします。
僕は達郎さんの歌詞も大好きで、愛、優しさ、思いやりの向こうに父性のような力強さ、包容力を感じますね。アメリカンポップスの意匠を纏いつつ、サビごとに「ごめん」「やっと」「せめて」「だから」と続く、和歌のように、あるいは西陣織のように丁寧に紡ぎ出される雅なパンチラインが言葉の芸術として実に美しく響きます。こんなところに達郎さんのメイド・イン・ジャパンのクオリティと音楽家としての職人魂を感じますね。
この曲に合わせるなら、サニーサイド感のある「MUSIC BOOK」や、とにかく腰にくる「BOMBER」。本当は全20曲以上ありますが(涙)。