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山下達郎新アルバム『SOFTLY』全曲レビュー。冨田ラボが語る「ANGEL OF THE LIGHT」

6月22日リリースの最新作『SOFTLY』の随所にちりばめられた山下達郎サウンドの魅力を冨田ラボが完全解説。さらに、併せて聴きたい山下達郎の楽曲も紹介。

text: Katsumi Watanabe

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冨田ラボが語る「ANGEL OF THE LIGHT」

山下達郎新アルバム『SOFTLY』全曲レビュー。冨田ラボが語る「ANGEL OF THE LIGHT」
「ずっと一緒さ」(2008年)のカップリング曲。アラン・オデイとの最後の共作となった。

「時代と闘いながら、良質な音楽を作り出す」

今でも鮮烈に覚えているのが『SONORITE』(2005年)を発表された時の達郎さんのインタビュー記事。当時、スタジオで主流になりつつあったハードディスクレコーダー、Pro Toolsのスペックがまだ低かったことから、制作が思うように進まなかったことを吐露されていたんです。当時のバージョンは、たしかにあまり音が良くなかった(笑)。

録音中にフリーズしてしまうなんてこともありましたから。しかし、決して後ろは振り向かず、最新の機材と格闘している達郎さんの姿勢から、すごく勇気をいただいた記憶があります。Pro Toolsもバージョンアップを繰り返し、新作では達郎さんの思い描く音像に近づいたのではないかと感じました。「ANGEL OF THE LIGHT」はスイートなバラードで、すごくパーソナルな印象。一人多重録音された部分が多いのではないかと想像しました。

また、英語で歌われているため、日本語の意味に引っ張られず、言葉をサウンドの一部として聴くこともできて。とはいえ、達郎さんの一番のシグネチャーは声だと思うので、ストリングスのような役目も担うコーラスが入り、曲の真ん中にあの声がある限り「いい曲だなぁ」と受け入れてしまうんですけどね。

「ANGEL OF THE LIGHT」に紐づけるとしたら、切ないバラードの「FUTARI」もいいですが。うーん……(熟考)。個人的にはとてもスイートな印象が残ったので、「あまく危険な香り」がいいかな。僕は学生時代、ほぼ洋楽しか聴かなかったんですが、テレビCMで流れていた「RIDE ON TIME」に衝撃を受け、達郎さんの曲をはじめ、邦楽も聴くキッカケになりました。

1982年1月『FOR YOU』発表後、4月にリリースされたのが「あまく危険な香り」。あれだけ濃厚なアルバムを出した後に、ドラマの主題歌になるような、アルバムの曲に負けない素晴らしい曲が矢継ぎ早に出てきたことに驚かされましたね。それから同じくミディアムテンポのスイートな曲なら、「夏への扉」も僕にはたまりません。

冨田ラボのrecommended song:「あまく危険な香り」(1982年)

『あまく危険な香り』山下達郎
「あまく危険な香り」(1982年)
作詞:山下達郎 作曲:山下達郎 編曲:山下達郎
同名のTBSドラマ主題歌として発表された9枚目のシングル。オリジナルアルバム未収録だが、現在は『OPUS 〜ALL TIME BEST 1975−2012〜』などでも聴ける。

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