写真家として活躍の場を広げる柏田テツヲさんは、壁一面に設(しつら)えた棚にその目で選んできたアートを置く。そこに並ぶのは木彫りの山や植物など、好みの自然物にまつわるものが数多い。
「旅に行けば、街のショップやギャラリーで持ち帰れるものがないかよく探しています。特に海外は街中でカジュアルにアートが売られていることが多くて、生活と地続きで心地いいんですよね」
昨秋にはロンドンで、ジュリー・コックバーンによる、写真が加工された作品を手に入れた。
「ファウンドフォトと呼ばれる、既存の写真に刺繍を施す作家さんです。いわば価値を失ったものに再び息を吹き込むような作業で、繊細で美しいんです。鳥が写った作品は額装も作家が手がけたもの。そのプロセスまで読み解くと嬉しくて、連れて帰ってきてしまいました。鮮やかな色使いしかり、しっかり刺激を受けていますね」
下の写真、中段右のサボテン形のアートは、柏田さんが撮影で定期的に通っているアメリカで出会ったもの。
「森山大道さんや川内倫子さんも所属しているロサンゼルスの〈ROSEGALLERY〉にふと入ったら、陶器の作品に目が留まって。ゴドゥレンヌ・ドゥ・ロザメルというアーティストを知ったのはその時です。可愛らしい作品も多いですが、僕はこの焼き物を選びました。狙ったのか、ハプニングなのか、釉薬の色味とドリップの具合がたまらなくて……。きっと、武骨だけど洗練された“生”を感じるものに目がなくて、そばに置いておきたいのだと思います」