メイド・イン・ジャパンの新しい形に触れる
「思わず触りたくなる佇まいって、日本の工芸ならではの美しさだと思うんです。このカップもそう。触れた時の感覚まで想像させるところに惹かれます」
アイウェアデザイナーの外山雄一さんがいつも目にする棚に飾っているのは、陶芸の町・岐阜県多治見市のアーティスト、桑田卓郎のセラミックカップ。たっぷり垂らしたプラチナ釉が、凜々しくも色気のある景色を生み出している。
「茶陶をルーツにした彫刻的な作品で知られる桑田さんですが、これは使うことも想定して作られたアートです。クスッと頬が緩む遊び心がありつつ、この表現に辿り着くまでの軌跡みたいなものも感じられる。伝統技術への敬意や、古典を新しい表現へつなげようとする生みの苦しみが伝わってきて、惚れ込んでしまったんです」
ものの内側からにじみ出る豊かなストーリーが、人を引きつけ、そばに置いておきたいと思わせる。それは外山さんが眼鏡のデザインにおいて目指すところでもある。
「眼鏡はアートではないし、僕はデザイナーなので自分の手で作ることはできません。ただ、アートが放つ輝きや試行錯誤が生む奥行きを、少しでも取り込みたいと考えていて。そういう自分の思いを、桑田さんの作品は再確認させてくれる。だからこそ、身近な場所に置いておきたいんです」