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メイド・イン・ジャパンの新しい形に触れる。〈YUICHI TOYAMA.〉外山雄一の小さなアートとの暮らし方

部屋に飾られるアートには、その人の個性が色濃く映し出されている。〈YUICHI TOYAMA.〉デザイナー・外山雄一さんはどのようにアートを選び、暮らしているのだろうか。

photo: Kazufumi Shimoyashiki / text: Masae Wako

メイド・イン・ジャパンの新しい形に触れる

「思わず触りたくなる佇まいって、日本の工芸ならではの美しさだと思うんです。このカップもそう。触れた時の感覚まで想像させるところに惹かれます」

アイウェアデザイナーの外山雄一さんがいつも目にする棚に飾っているのは、陶芸の町・岐阜県多治見市のアーティスト、桑田卓郎のセラミックカップ。たっぷり垂らしたプラチナ釉が、凜々しくも色気のある景色を生み出している。

「茶陶をルーツにした彫刻的な作品で知られる桑田さんですが、これは使うことも想定して作られたアートです。クスッと頬が緩む遊び心がありつつ、この表現に辿り着くまでの軌跡みたいなものも感じられる。伝統技術への敬意や、古典を新しい表現へつなげようとする生みの苦しみが伝わってきて、惚れ込んでしまったんです」

陶芸家・桑田卓郎の作品
メタリックカップとも呼ばれる作品は2022年に手に入れた。NYの陶芸家シモーン・ボドマー・ターナーの作品と並べ、英国製キャビネットに飾っている。壁のタイルは桑田の工房とも近い多治見製。

ものの内側からにじみ出る豊かなストーリーが、人を引きつけ、そばに置いておきたいと思わせる。それは外山さんが眼鏡のデザインにおいて目指すところでもある。

「眼鏡はアートではないし、僕はデザイナーなので自分の手で作ることはできません。ただ、アートが放つ輝きや試行錯誤が生む奥行きを、少しでも取り込みたいと考えていて。そういう自分の思いを、桑田さんの作品は再確認させてくれる。だからこそ、身近な場所に置いておきたいんです」

桑田卓郎

陶芸家・桑田卓郎の作品
くわた・たくろう/1981年広島県生まれ。茶の湯の茶碗に見られる梅花皮(鮫肌状の釉薬の縮れ)や釉垂れといった技法を会得し、時にポップ、時に斬新なアートとして表現する。2018年に「LOEWE Craft Prize」特別賞受賞。photo:Yasushi Ichikawa ©Takuro Kuwata, Courtesy of KOSAKU KANECHIKA