有機と無機のバランスに惹かれる
「職業柄、仕事でお世話になった写真家の作品を購入することが多いんです。なので、職場でも自宅でも多いのは写真。立体作品は珍しいですね」
そう話すアートディレクターの小酒井祥悟さんがリビングに飾るのは、西舘朋央の木製の作品。2020年頃に〈(PLACE) by method〉で行われた個展を訪れ、目に留まって購入した。グレーに塗られ、パズルのように組み合わせられた木材の間からは、無垢かつ力強い本来の姿が覗く。
小酒井さんの自宅は壁の色に合わせ、ホワイトやグレーなどの色合いを基調にしている。工業的でミニマルな家具が多いため、自然物はいっそう存在感を放つ。選んだ決め手は、有機的な素材と、無機的な表現のバランスだという。
「普段は仕事柄、物事を整理してシンプルにアウトプットする傾向にあるのですが、紙などの素材を選ぶ際は複雑なテクスチャーがあるものに惹かれます。筒のような形状をした作品もあったんですけど、この形が気になって決めました。西舘さんもイチオシだって」
光が当たるとくぼみと斜めのパーツの傍らに影が生まれ、見るたび表情を変える。生き物のようで幾何学的な作品が居間にある。その多面性が魅力的だ。