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140字はもう古い!?こぼれ出るため息は「川柳」に吐き出そう

「わかる!」と大きく頷きたくなる、せつないのに面白い、そして奥深い「川柳」の世界。五・七・五からあぶり出される、人間の真実の姿とは?

text : Asuka Ochi

SNS疲れも話題に上る近年。つぶやきたいのに他人に読まれることを思って躊躇したり、ぼやきたいけれどぼやけなかったり。コロナ禍で人と会う機会が減ったいま、弱音や愚痴の行き場をなくし、気づけば抱えてしまっている人も多いのではないか。しかし、王様の耳はロバの耳の「穴」のような捌け口を探していたら、我々を救う、自由すぎる創作の世界があった。

五・七・五のリズムで人情や想いを詠む「川柳」。俳句と違って季語も必要なく、ワビサビも不要。口語体で心のままを吐き出せば、人間らしい風刺のきいた作品が生まれる。たった17文字で、誰に迷惑をかけることもなく、誰も傷つけず、詠めばすっきり。俳句同様に様々なコンテストが行われている川柳だが、いったいどのような作品があるのか。

例えば、全国有料老人ホーム協会(以下、有老協)が2001年から毎年、敬老の日に向けて公募している「有老協シルバー川柳」。このコンテストは、高齢社会・高齢者の日々の生活に関するものであればどんな題材でもOK。年齢制限や応募資格も一切不要であることから、「シルバー」を掲げるものの、幅広い年齢層から作品が集まっている。

2021年の応募は過去最多となる16,621句。2019年のコロナ前の8,793句と比べると、応募数は2倍近くになる。やはり多くの人が川柳を求めていると納得できる数字だ。

前置きはこのくらいにして、21年分すべてののなかから、至極個人的な傑作15選をお送りしよう。

「密です」と 言われてみたい 頭頂部

秀爺(男性・富山県・62歳・会社員)

→ コロナの「密」を頭頂部と比較するナイスセンス。

お見舞いに ぞろぞろ来たら そろそろか

五十嵐豊(男性・埼玉県・52歳・会社員)

→ ぞろぞろって。お気持ちお察しします。

四元号 生き抜き迎える 白寿かな

山田祐四郎(男性・千葉県・97歳・無職)

→ おめでとうございます。技を感じる美しい五・七・五に拍手!

自分でも 事実か分からぬ 武勇伝

しなやかーる(男性・滋賀県・66歳・無職)

→ 人に話しすぎてどんどん盛った成れの果て。

徘徊の ルートAI にも読めず

荘子隆(男性・宮崎県・67歳・会社員)

→ まだまだAIにも越えられない壁が。

デイサービス 「お迎えです」 はやめてくれ

相野正(男性・大阪府・68歳・無職)

→ 「お出かけです」で、いかがでしょうか。

温かく 迎えてくれるは 便座のみ

圓崎典子(女性・茨城県・53歳・パート)

→ せつなさの極限を見ました。

「君の名は?」 老人会でも 流行語

はだのさとこ(女性・岡山県・62歳・主婦)

→ また違った映画が撮れそうですね。

年賀状 出さずにいたら 死亡説

角森玲子(女性・島根県・47歳・自営業)

→ 年1の生存連絡のめでたさよ。

ひ孫の名 読めない 書けない 聞きとれない

松本俊彦(男性・京都府・48歳・会社員)

→ そして、ぜんぜん覚えられないし。

耳遠く オレオレ詐欺も 困り果て

岩間康之(男性・兵庫県・60歳・公務員)

→ オレオレ詐欺も退散ですか。

起きたけど 寝るまでとくに 用もなし

吉村明宏(男性・埼玉県・73歳・無職)

→ すごいシンプルな「無」!

「いらっしゃい」 孫を迎えて 去る諭吉

上本幸子(女性・大阪府・63歳・パート)

→ 諭吉が去るうちが華です。

注目を 一身に受け 餅食べる

山本哲也(男性千葉県・39歳・会社員)

→ 毎年、何人かはいますからね。

メモ帳の しまい場所にも メモが要る

宮川孝志(男性・埼玉県・65歳・会社員)

→ メモの場所にもさらにメモが要る無限ループ。

以上、「シルバー川柳」傑作選、いかがだったでしょうか。これを読んで、自分も詠んでみたくなった方、今年「第22回 有老協 シルバー川柳」も6月10日まで絶賛募集中ですので、ぜひご応募を!