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サイレント・ポエツに聞く、7年ぶりの新作『HOPE』のこと。『デススト』小島秀夫との出会いも

下田法晴(しもだみちはる)のソロユニット、サイレント・ポエツが新作『HOPE』をリリースした。前作『dawn』(2018年)発表後は、初のバンド編成によるライブやフェスへの出演、その模様を収録した映画『SAVE THE DAY』製作など、マイペースなキャリアを歩んできた中で、最も盛んに活動した時期だったという。

photo: Jun Nakagawa / text: Katsumi Watanabe / edit: Emi Fukushima

──前作から7年というブランクは、下田さんご自身にとって、想定外だったそうですね。

前作のプロジェクトが終わってから、すぐに新作に取りかかろうと思っていたところで、コロナ禍があり、すべてがストップしてしまったんです。その後、個人的なことですが大病を患い、手術を受けたりして。心身ともに復調してきた、2023年から制作を再開させたんです。

前に進みたくても、止まらなければならない状況が重なったことが要因なのか、どんどん曲ができて、気がついたら十数曲が出来上がっていました。これまではアルバム用に10曲作るのが大変だったのに(笑)。自分でも意外でしたね。

──アルバムのコンセプトにもなっている『HOPE』というタイトルは、いつ頃つけられていたんですか?

下田

ロシアのウクライナ侵攻や、イスラエルによるガザへの攻撃といった戦争の影響が大きかった。絶望的な状況を見た時、誰でも目を覆いたくなるような感覚というか、諦めちゃうことがあると思います。

日本国内においても個人が不公正な社会や権力に抵抗しても無駄だという空気感に溢れている。しかし、無関心なふりをして、諦めてしまったら、本当にヤバいと思った。そういう意味で、自分でもできることは、希望を捨てないことだと考え、タイトルにしたんです。

──14曲中、11曲にゲストミュージシャンを迎えていますが、『HOPE』という意志に賛同された面々が参加されているんですか?

下田

そうですね。平和を望む人もいれば、現状に怒っている人もいて。ゲスト勢の多くは、最初に自分でSNSのダイレクトメッセージからコンタクトをとって参加してもらいました。以前共演したランキン・アンやアースラ・ラッカー、こだま和文さん以外、会ったことのない人たちばかりなんです。

──アルバムの冒頭を飾る「Chariot I Plead feat. Tim Smith」と「Hope feat. Denise Sherwood」は、ゲーム『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』の挿入歌になっていますね。小島秀夫監督とはどんなきっかけで出会ったんですか?

下田

僕がオーナーを務める事務所には、ケータリングの部署があり、今から7年くらい前に小島監督の会社が主催するパーティから依頼があったんです。

その時、たまたま人手が足りなかったので、僕も手伝いに行って。前作『dawn』のCDをお渡ししたんです。突然のことで監督も面食らったと思いますが(笑)。「Asylums for the feeling feat. Lelia Adu」を気に入ってくれて、『DEATH STRANDING』の挿入歌として使用したい旨、連絡をいただきました。

さらにエンディング曲の依頼もあって。それが「Almost Nothing feat. Okay Kaya」でした。23年の続編制作中に、また曲の依頼をいただいて、僕も『HOPE』の制作準備をしていたので、デモ段階の曲を聴いて2曲選んでもらいました。

僕はゲームには詳しくありませんが、小島監督が手がけるものは、戦闘シーンはあるものの、どこか平和的な内容が多いように感じて。たとえ、人気の作品でも、もし暴力的なものだったら、お断りしていたと思う。幸運な出会いに、感謝しています。

下田法晴

『HOPE』でタッグを組んだアーティストたち