元ホストが感じた、“春画”と“歌舞伎町”の類似点
「春画ってハードルが高いですよね。見たことがない人も多いと思う。でもそういう人にこそ体験してほしいんです。脳みその未知なる部分を刺激されるアートだから」
こう話すのは手塚マキさん。春画展を主催するホストクラブ〈Smappa! Group〉の会長だ。会場は〈新宿歌舞伎町能舞台〉。世界的コレクター〈浦上蒼穹堂〉の浦上満による春画コレクションから、菱川師宣、喜多川歌麿、葛飾北斎、歌川国芳らスター絵師たちの約100点が展示されている。

北斎の異色の傑作も展示。女性2人の性遍歴を描くシリーズもの。
「江戸時代の国民的娯楽だった浮世絵の中でも、とびきりポップで濃密で、時には冗談みたいに笑えたりもするのが春画です。一枚の絵に色気も洒落も人間模様も詰まっていて、そのパワーたるや恐ろしいほど」
春画を観る舞台として歌舞伎町を選んだのは、両者が似ているから。入口のハードルは高くても、一歩踏み込めば底知れぬ面白さに触れられる。
「春画は“笑い絵”“ワ印(わじるし)”とも呼ばれ、仲間と絵を囲んで笑ったり読み解いたりする娯楽でもありました。なので実は……」
第2会場は改装したホストクラブ。メイン会場とともにそんな体験ができる空間も用意した。
「今多くの人が抱えている閉塞感の突破口が、江戸文化にある気がするんです。それは楽しむことに真剣になる力と、寛容さ。春画はその象徴です。浮世絵師たちは幕府の厳しい“風俗取り締まり”も、知恵とユーモアを注ぎ込んだ春画を描くことで、軽やかにかわしていた。そういう粋な生き方を、春画の中に見つけてほしいですね」