『大列車強盗』
12min.
ネットドラマというよりも、YouTube動画を楽しむかのような短さである。それもそのはず、本作は映画草創期に作られ、世界初の西部劇ともいわれる一本だからだ。撮影手法も原始的で、カメラを固定したワンシーンワンショットで撮影された14シーンを構成して作り上げている。ストーリーはもとより、映画という新コンテンツに対する製作者たちのみずみずしい意欲を感じられる作品だ。
『アンダルシアの犬』
17min.
12min.
ルイス・ブニュエルとサルバドール・ダリの共作で有名な本作。衝撃を受けるのは、その奇想天外ぶり。手のひらにうごめくアリの群れや、女性の脇毛のアップ、ピアノの上に横たわるロバの死体。中でも目を覆いたくなるのが女性の目玉をかみそりで切り開くシーン。エロスと暴力とグロテスクが混じった不思議な世界。映画の可能性を広げた、シュルレアリスム作品として一度は観ておきたい。
『ラ・ジュテ』
28min.
舞台は核戦争によって荒廃したパリ。人類は地下に潜り、支配者たちは被征服者たちを過去に飛ばす実験を行い、人類存続の鍵を探らせようとする。モノクロの静止画とナレーションによるシンプルな構成が、観る者の想像力を飛躍させるのか、主人公とともに時空をさまよう感覚により、28分間の作品とは思えない豊かな余韻を味わわせてくれる。ちなみに『12モンキーズ』は本作がモデルである。
『夜と霧』
33min.
直視するのがツライ30分間である。本作はホロコーストと向き合った最初の映画。ブルドーザーで穴へ埋められる死体、骸骨のように痩せた体で行進させられる人々。廃墟となった現代の強制収容所の映像と交互に描かれる地獄から、私たちは目を背けてはいけない。実は収容所のすぐそばに都市があったことを伝えるシーンは、「一市民も悪に加担する可能性を孕(はら)んでいる」というメッセージだ。
『キートンの探偵学入門』
44min.
これこそ、あれよあれよと進む名作短編映画の象徴であろう。喜劇俳優バスター・キートンの名を世に知らしめたドタバタコメディの傑作。ところどころに仕込まれる笑いの種はもちろん、目を見張るのがキートン自身による見事なスタント。オートバイのハンドル部に腰かけての疾走や、ライオンを前にした演技など、トム・クルーズやジャッキー・チェンも真っ青な体当たり演技が見ものである。
『黄金時代』
60min.
過激な右翼がスクリーンに向かって爆弾を投げつけたことでも有名な問題作。ルイス・ブニュエルは、無意識下に眠るエロティシズムや攻撃性をさまざまな描写で揺り動かし、形骸化したキリスト教に対しても痛烈に批判する。一度観ただけでは理解不能なシーンも確かにある。しかし、映像コンテンツを消費的に視聴するいまこそ、何度も噛み締めて観る一本として手を伸ばしてみてはいかが?