ボーカリストのシーナと、ギタリストの鮎川誠。1978年の結成から30年以上、夫婦でフロントを務め、パーマネントな活動を続けた、世界規模で唯一のバンド、シーナ&ロケッツ。その軌跡を追った映画『シーナ&ロケッツ 鮎川誠 〜ロックと家族の絆〜』が公開される。
本編は2人のルーツである九州から始まり、それぞれの音楽的なバックグラウンド、出会いやバンド結成、そして名曲が生まれた背景など、各時代の資料や関係者たちの証言を交えながら迫った作品。
しかし、凡百のドキュメンタリーと決定的に異なるのは、2人を支えた家族の存在だ。まず、78年にバンド活動をしながら福岡で暮らしていた夫婦へ、「勝負してこい」と東京へ送り出すシーナの実父から、発想が「一か八か」のロックンローラーそのもの。
そして、2人の間に生まれた3人の娘たち。授業参観や学童交通擁護員に、母へライダースジャケットや、ミニスカートで来るようリクエストする長女。父のギターに合わせ「ユー・メイ・ドリーム」をたどたどしく歌う三女など。R&Rを生活のベースにした夫婦ながら、その子供たちから、まさか煽られるとは。
2015年のシーナ永眠後にも、ライブを続ける鮎川のそばには、バンドのマネージャーになった次女の姿が。そして、父と一緒にステージへ上がり、母が歌った曲のボーカルを三女が取ることもあった。
R&Rは、その誕生以来、反逆の音楽だと呼ばれてきた。しかし、この映画の鮎川家を見る限り、R&R=優しさだと、考え方を一変させられる。ロックンローラー(特に家族を持つ)は必見の作品だ。