堀内誠一はアートディレクター(ばかげた呼び名だと本人は嫌っていた)として、「ブルータス」「アンアン」「ポパイ」「オリーブ」をはじめ数々の雑誌の決定的瞬間に関わり、ビジュアル誌の礎を築いたレジェンドだ。
その華やかな誌面構成と既存のフォントでは表現できないロゴデザインの数々は、没後35年経った今も色褪せることがない。「アンアン」「オリーブ」の書き文字、アナログ時代では新鮮だったエアブラシで描かれた「ポパイ」の3D風ロゴ、もちろん我らが「ブルータス」のロゴも彼の手によるものだ。ギザギザのフォントは、力持ちのブルートが木をパキッと折ったときの、切り口のイメージなのです。
![BRUTUS ブルータス 百読本 表紙](https://brutus.jp/wp-content/uploads/2021/12/2022-4910277530123-1-2.jpg)
![POPEYE ガールフレンド 表紙](https://brutus.jp/wp-content/uploads/2021/12/2022-4910180290121-1-2.jpg)
その堀内誠一の生誕90年を記念した展覧会『堀内誠一 絵の世界』が1月4日から大丸ミュージアム〈京都〉で開催される。堀内の活動の柱はデザイン(グラフィックデザイナー)、絵本(アーティスト)、挿絵(イラストレーター)だが、この展覧会は彼の画業に軸足を置いたキュレーションで行われる。一生涯“アーティストになってしまわないように”と自らを律した活動に再注目したい。
![ぐるんぱのようちえん](https://brutus.jp/wp-content/uploads/2021/12/8959fbea059395379de60eb234fc774d-1600x1078.jpg)
「絵本作家の道こそ運命が決めた本命」と生前に本人が語っていたこともあり、展示は絵本世界が中心。子供たちに大人以上の敬意を払っていた堀内は数多くの絵本を発表してきた。
![ぐるんぱのようちえん](https://brutus.jp/wp-content/uploads/2021/12/b65993c36f128bc5ea7bec7e991845fe-1600x3305.jpg)
『くろうまブランキー』『ぐるんぱのようちえん』などをフィーチャーした「はじまりの絵本たち」。アンデルセンや宮沢賢治などの名作をビジュアル化した『名作と向き合う』。現在も数カ国で翻訳されるベストセラー『ちのはなし』『ほね』など子供の頃の落書きの延長とも言える「好奇心と科学の絵本」。
![こすずめのぼうけん](https://brutus.jp/wp-content/uploads/2021/12/889bd0dd6f308c162708d55ae373d5e3-1600x1442.jpg)
多様な画風やアプローチで遊び心たっぷりに描いた『でてきておひさま』『どうぶつしんぶん』『どうくつをたんけんする』などをくくる「広がる絵本の世界」。そして堀内が7年間暮らしたパリでのエスプリあふれた筆致で描いた品群と変幻自在な画風とフォーマットの変遷を5つのテーマで展観していく。
![たろうのおでかけ](https://brutus.jp/wp-content/uploads/2021/12/b160b14e4408714a14d81d64f2094140-1600x788.jpg)
もちろんアートディレクター、グラフィックデザイナーとして関わった懐かしいCMや雑誌の作品もあまねく紹介する。中でも旅を通して描かれた、パリやシチリアなどの旅先での風景や「魂が絵の中に旅立つような心地がするほどで、そのディテールには計画と奉仕がいっぱい詰まっている」と称えられた絵地図も必見。さらには子供の頃のスケッチや画塾に通っていた頃のデッサン、そして初期の珍しい油絵などの創作の原点も数多く展示されている。
![ロボットカミイ](https://brutus.jp/wp-content/uploads/2021/12/531137bf980eebf68c74c75ca7ce2116-1600x1890.jpg)
2021年は安西水丸、和田誠、堀内誠一といち時代を築いたレジェンドたちのエキシビションが続いた。画家という枠に収まらず、器用で多彩な才能を辿った展示内容はどれも愛らしく楽しい。彼らの表現するビジュアルは、われわれを説得するのに十分な、やさしいメッセージを持ち合わせている。『堀内誠一 絵の世界』展もまた、必見である。
![堀内誠一 絵の世界 京都 BRUTUS ブルータス](https://brutus.jp/wp-content/uploads/2021/12/80de6fda7a8d18332f755955f3ec0d63.jpg)