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BLUE ENCOUNT・田邊駿一とandrop・前田恭介が語るサウナ愛

音楽業界きってのサウナーであるBLUE ENCOUNTの田邊駿一と、andropの前田恭介が全国ツアーの裏にあるサウナ事情や、日常でのサウナとの関わりについて語る。BRUTUS975号「サウナ、その先の楽園へ。」に掲載された対談のロングバージョンに、対談の進行を務めたベーシストの濱田織人とともに日帰りサ旅を敢行した後日談も加えた完全版!

photo: Kazuho Maruo / text: Orito Hamada

その瞬間を大切にするのはサウナも音楽も同じ

濱田織人

サウナにハマったきっかけってなんだったの?

田邊駿一

もともと事務所の社長とトレーニングをご一緒させてもらっていたときに温冷交代浴を教わって。ライブで地元に帰ったとき、ホテルにサウナがあったので同じようにやってみたんですが、全く気持ちよくなかったんです。

なんなら風邪ひいたぐらいで。それを友達に話したら、それはよくないからって連れていってもらったのが、錦糸町の〈ニューウイング〉。そこでサウナを覚えました。僕の産湯ですね。

前田恭介

いい産湯だね。僕はバンドの映像を撮ってくれているクリエイターと話していたら、「最近、実はサウナにはまっててさ」って言い出して。その人が、サウナの話をしているときに顔が妙にトロンとしてて(笑)。

8年ぐらい前なんですが、バンドメンバー全員で静岡の〈しきじ〉に連れていってもらったんです。それが産湯。

濱田

産湯が〈しきじ〉なんだ。おー。

前田

そう。実際に行ったら、浴場内がすごく自由な光景で。みんな気楽に楽しんでたけど、最初はよさがわからなかった。でも薬草サウナの匂いがなんか忘れられないなと。そこからメンバー全員がはまりました。

ツアー先でのサウナ事情

濱田

最近ハマっているツアー先のサウナってある?

田邊

今、福岡で一番好きな〈筑紫野 天拝の郷〉っていうサウナがあって。もともとはいわゆる普通のスーパー銭湯だった施設を、ある変態サウナーさんが改造して。その方の熱波サービス(水蒸気をタオルで回しあおぐこと)がかなりすごくて、神楽っていうんですよ。ちゃんと厳かな衣装も着てやるんです。

サウナ室の前には鳥居があって、そこに一礼してから熱波が始まる。完全にエンタメです。露天スペースもいいんですよ。次からツアーで福岡へ行くときは必ずそこに泊まりたいくらいです。

前田

ツアーで地方のいいサウナには本当によく行ってるなぁ。熊本の〈湯らっくす〉はやっぱり好き。ツアー先の宿をサウナで決めているミュージシャンって案外多いよね。僕は〈サウナリゾートオリエンタル札幌〉も好きだな。地下の屋外スペースに吹き下ろす雪風がまたいいんだよ。

濱田

僕は福岡なら〈偕楽荘〉っていう日本有数の濃度が濃い薬湯、ラドン水の水風呂に温泉蒸気の高温スチームサウナがある施設が最高に気持ちよくて。あとは岐阜の郡上市にある貸し別荘にあるバレルサウナがすごくてさ。きれいな川の源流に飛び込めるんだよ。2人を連れていきたいよ。

ルーティンではなく楽しみ方を常に探しながら向き合う

濱田

サウナのときのルーティンってある?

田邊

僕はツアー本番日には、必ず“朝ウナ”します。ライブ後にも入るから、サウナは2公演。ライブは1公演。朝ウナ後にツアーに同行してもらっている鍼灸師さんにすぐメンテナンスしてもらっています。声帯まわりの筋肉もよりほぐれてパフォーマンスも上がっていますね。

前田

サウナはルーティンよりもその場を楽しむっていうのはあるな。自己対話の時間でもあるから、自分の調子によっても入り方が変わる。時計ももう見てないかも。ここかなってタイミングだけかもしれない。

田邊

わかります。僕はそのことを「サウナと会話する」って言ってるんですよ。だからサウナ室ではほとんど喋らない。友達と行くときに2人ともいいなってなると、目が合うと口パクで「最高」って言います。

前田

すごくわかる。無言になる瞬間があると、ここいいなってなるね。

田邊

そうそう。無駄な話を広げなくていいのがいいんです。サウナ室の音で十分なんですよ。その後に飲みに行ってもあんまり話をしないとき、ありません?

前田

ご飯の味も入ってくるよね。

濱田

サウナ入ったあとはこれ僕よく言うんだけど、自分自身が5点になるから、僕はお店の口コミサイトの点数的に10点までいけるんだよね。

田邊

だからその分、美味しいお店に行きたいんですよね。今度一緒にサ旅しましょうよ。

濱田

行こう。あとで日程決めよう。

前田

僕たち音楽家って、向き合い癖があると思うんです。それがサウナにハマる理由かも。例えばロールプレイングゲームで、レベルがある程度上がってくると、1上げるのが本当に大変。音楽も続けると、成長するのがより大変になるので、何かを掴みにサウナに行ってるかもしれないなって。

田邊

その言葉すごいですね。僕はやっぱり一人になれるところかもしれないです。サウナにいるときは、本当に素直に一人になれる。黙浴がさらにいい効果になってますよね。

BLUE ENCOUNTボーカリスト、ギタリスト・田邊駿一 × andropベーシスト・前田恭介
高温の熱波を浴びてととのった2人。前田はプライベートでも〈たかの湯〉に通っているそう。

ととのったあとに聴きたい音楽は?

濱田

ととのったあとに聴きたい音楽ってどんな音楽?

田邊

サウナ後、僕は基本的に浮遊感を求めます。昔から聴いている曲や好きなバンドの曲を改めて聴くと、新たな発見がいまだにあって。今回はあの頃を思い出して、“エモととのい”するイメージで選びました。

前田

僕は、気分によって変えていて。曲順の流れがすごく大事で、サウナ後の用事への気持ちにつなげるイメージかも。セットリストなんだよね。これもエモととのいかもしれないね。

濱田

なるほどね。2人とも面白いなぁ。

田邊

そろそろサウナ入りに行きませんか?ミュージックロウリュを一緒に体験して、口パクで「最高」って言いたいです。

前田

いいね。実はここのサウナ好きなんだよ。ミュージックロウリュって、音楽とサウナのトランス感が絶妙なんだよね。一緒に入るの楽しみだなぁ。

濱田

んじゃ、行こうか。

後日談。3人で日帰りサ旅で語り明かした夜

インタビュー当日に3人で、スケジュールを確認して日帰りでサウナに行くことに。場所は、宇都宮の〈ザ・グランドスパ南大門〉。ここは、超巨大なサウナ室と、アロマスチームサウナ。水風呂も温度違いで2種類ありながら、横には広い泳げるプールもある施設。露天風呂も温度違いで3つあり、自由に好きなタイミングでいろんな入り方ができる知る人ぞ知る名サウナ。

サ室内ではやはり、黙浴しながら口パクで「最高」と言いながら、過ごし、途中炭酸泉に入ってから水風呂に入る酸冷交代浴も入れながらサウナを楽しんだ。また施設内併設の〈焼肉南大門〉の焼肉がとにかく美味しい。ととのった状態で、舌鼓。特にここの白菜のコッチョリキムチが秀逸すぎて、何回もおかわりしてしまった。帰りの新幹線で3人とも爆睡しながら帰りました。本当にいい一日だった。

前田恭介がととのったあとに聴きたいプレイリスト

田邊駿一がととのったあとに聴きたいプレイリスト

濱田織人がととのったあとに聴きたいプレイリスト