15日目:無料のパブリックサウナ。コミュニティの究極形
海外で、サウナに詳しい人たちが絶賛し、目標とするサウナ施設がある。それが〈Sompasauna〉だ。サウナのことをある程度知れば、自国に〈Sompasauna〉のようなコミュニティが欲しいと熱望するのが自然だろう。
〈Sompasauna〉は始まりから一風変わっていて面白い。
2011年夏、誰かが海岸沿いの使われていない小屋を勝手に修繕し、サウナ小屋として使い始めた。「スクワット」(不法占拠)というやつだ。そしてそれを人々がさらに無許可で使い始めた。利用人数の増加とともにボランティア組織が自然発生。現在は社団法人化し、ヘルシンキ市も認め、世にも珍しい完全無料のパブリックサウナが誕生した。違法サウナが、今やフィンランド文化を代表する一大公衆サウナコミュニティに育ったのだ。
現在までに1度だけ場所を替え、移築された3つのサウナ小屋を稼働させ、24時間さまざまな人たちがサウナを、いや自由を楽しんでいる。薪を割るもよし、海水浴を楽しむもよし、楽器を演奏するもよし、サウナに入るもよし。それぞれが自由な形でサウナを楽しむ姿はまさにコミュニティの究極系。アジール(聖域)だ。
男女共に野ざらしの場所で着替え、シャワーもなく、飲料を売っているわけでもない。不満があれば、自分で解決すればいいというスタイル。それぞれが自分なりにサウナを楽しむ、それがこんなにシンプルで素晴らしかったとは!
旅の終わりを〈Sompasauna〉にして良かった。サウナは自由で、平等で、面白い文化だということを改めて噛み締めることができたのだから。
海辺に座りフィンランドの夕日を眺めながら、僕たちの長い長いサ旅もついに終わりを迎えたのであった。