Learn

Learn

学ぶ

サウナ専門ブランドの〈TTNE〉が語る、サウナの建築&デザインの現在

サウナの「おっさんイメージ」を払拭するため、高度にデザインされたサウナを数多くプロデュースし、ブームを牽引し続けてきたTTNEのととのえ親方に、最新のサウナ建築について話を聞いた。

text: Yohei Kusanagi

建築界にもサウナブームが起きていた⁉

今、建築家が造るサウナが注目されている。

代表的な例が、スキーマ建築計画の長坂常が改修を手がけ、話題になった東京・墨田区の〈黄金湯こがねゆ)〉だ。デザイン銭湯の先駆けとされ、連日多くの客で賑わっている。

こうしたスタイリッシュな銭湯やサウナが多く生まれるようになったのは、長年活動を続けてきたプロサウナーチームであるTTNEの存在が大きく影響している。

「もともとサウナの世界にデザインが入っていなかったというわけではないんだよね。大阪の老舗サウナ〈ニュージャパン〉や、東京の総合アミューズメント施設〈LaQua〉とか、オリジナリティある施設もありましたから」
そう語ってくれたのはTTNEの一人、ととのえ親方だ。

カッコいいサウナを造りたい。建築家とサウナを繋ぐ

「僕らが海外のサウナを初めて視察する旅に出たのが2016年。“いつの日か、海外のサウナのようなカッコいいサ室を造ろうぜ!”と、サウナ師匠と盛り上がった。それである施設に“サウナ室から眺められるようにした水風呂を造りましょう!”という提案をしたんだけど、“おっさんの裸を見て、何が楽しいんだ!”と断られてしまう始末。砂漠の中にオアシスがある、それがシズル感あるのに、施設オーナーには全然伝わらなかったんだね〜」

日本にフィンランド式サウナがほとんど導入されておらず、ロウリュができる施設も少なかった時代。それでもカッコいいサウナを造りたい、より良いサウナを造りたいという親方たちの熱意は、少しずつ日本の温浴業者に伝わっていく。

「一番最初にサウナプロデュースさせてもらったのは北海道の〈洞爺湖万世閣ホテルレイクサイドテラス〉。念願の、サウナ室から眺められる水風呂も造らせてもらったし、壁のヒノキに水をかけられる“ウォーリュウ”も造らせてもらった」

建築家やデザイナーがサウナを造ったら、もっと面白くなるに違いない。やがて彼らが使えるようにと、サウナ機器の輸入もスタートさせた。

「建築家とがっつり一緒にサウナを造ったのは、坂茂建築設計が手がけた〈ショウナイホテル スイデンテラス〉から。新設するサウナについて考えてほしいと言われて、普通のサウナ室じゃ面白くないと、坂茂建築設計に6回くらいやり直してもらったんだ。今思えば畏(おそ)れ多い(笑)」

ここ数年でわかったのは、建築家は建築には詳しいが、サウナに精通しているわけではないということ。サウナを知らないのであれば、「僕らと一緒に勉強してもらえれば」と思った親方たちは、さまざまな関係者をサウナに連れていき、指南するように。これが今の建築・デザイン業界のサウナブームの水脈となった。

これまでたくさんのサウナを手がけてきた親方に、デザイン的なターニングポイントを尋ねてみた。
「静岡にある老舗旅館〈おちあいろう〉は、デザイン的な意味で重要だったと思うね。日本のサウナはフィンランドやドイツみたいなものばかりで、日本らしいデザインは少なかった。そこで茶室をモルディブの水上コテージ風に仕上げてみた」

最近では、建築家の造るサウナのアップデートに感心しているという。「谷尻誠氏は“サウナは単純にいえば暖かい箱”という考えから造っている。良い意味でシンプルで軽いサウナ。とても面白いよね」

建築家は造ることで仕事が完結するが、サウナは建築物内に残され、長い年月使われていく。だからこそ親方は「建築家とサウナを繋ぐ懸け橋になりたい」と話した。

静岡〈おちあいろう〉茶室サウナ
〈おちあいろう〉の茶室サウナ。水風呂にはすぐそばを流れる狩野川の水を使っているため清洌(せいれつ)!
山梨〈石のサウナ〉外観

谷尻誠の建築作品「石のサウナ」。石だけで造るテントサウナを具現化したアートピース。©清春芸術村/Foundation Yoshii