定義しにくくすること、“混乱”から生まれることもある
2025年現在、最もクリエイティブシーンに熱があるのは韓国と言っても過言ではないだろう。音楽から映像、アートまで日々斬新な作品が生み出され、K-POPはそれら様々なものを取り込んだ総合芸術として世界的な音楽の一ジャンルを築き上げている。
「K-POPはその誕生から、全世界のあらゆる大衆文化をミックスする中で誕生した突然変異のような存在だと思います。だからこそ、“K-POPはこんなジャンルだ”と定義しにくく、それが持つ無国籍性、無境界の概念が好きなんです」
そう語るのは、“オルタナティブK-POP”を標榜するバンドであり、クリエイティブエージェンシーでもあり、ミュージシャンから映像作家、アーティストまでが集うコレクティブ〈Balming Tiger〉のリーダーであるサン・ヤウン。
2024年は、BTSのリーダーRMのソロアルバムをプロデュースし、バンドとしてはイギリスの権威ある音楽フェスティバル『グラストンベリー・フェスティバル』に出演するなど、最先端のクリエイティブを生み出している人物だ。
「センスという言葉が抽象的で難しいお題ではありますが……」と前置きしつつも話してくれた〈Balming Tiger〉のコンセプトにはその一端が垣間見えてくる。
「私たちは、K-POPに“オルタナティブ”という言葉をつけて、より一層定義しにくくすることで、私たちが作り出している、どんな独創的なスタイルでも、変な音楽でも、包括できる名前を作ろうとしたんです」
定義できないようにすることで多面的であること、それがサン・ヤウンが考えるセンスでもある。「何より私が大切に思っているのは、見る人の視線によって違って見えてくるということ。子供の目で見るとただ楽しい内容ですが、大人の目で見ると違って見えるもの。そんなものを作りたいですし、リスペクトします」
一方、ビートルズをチームの最高の手本とする彼にとってセンスのいいチームビルディング、プロデュースとはなんだろうか。
「例えば、映画を作るとします。主演俳優の役割を誠実に遂行し、監督にすべての演出の権限を与えることを好む俳優もいれば、主演俳優の役割だけでなく、演出にも関わりたい俳優もいる。色々な方法にはすべて長所と短所がありますが、相手のやりたいことに合わせて、様々なコミュニケーションを状況に合わせて転換できること、それが私が考えるいいプロデューシングの定義です」