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釣れる!Mighty CrownのSAMI-Tがハマる、SUPフィッシングの魅力とは

四駆のバンには、Stand Up Paddleboard(SUP)用のボードと釣り竿が積まれている。ボードにセットアップする買い物カゴには、魚を掴むフィッシュグリップやルアーなどの装備。世界No.1のレゲエサウンドで知られるMighty CrownのSAMI-TさんにとってSUPフィッシングは、もはや日々の営みになっている。

photo: Kazuharu Igarashi / text: Toshiya Muraoka

2年半約100回の釣行で、釣った魚種は30種以上

コロナ禍によって自由に動き回れず、週末のショーが次々と中止になっていった時期に、SAMI-Tさんは、兼ねてから誘われていたSUPフィッシングを始めた。子どもの頃には、地元・本牧の海釣り公園に行ったり、叔父に誘われて石鯛釣りをしたりしていたが、どちらかといえば海には近寄らず、「塩水とか砂なんてウザい」と思って暮らしてきたという。およそ8年前に移住してサーフィンを始めてからは海に親しんでいたが、それでもSUPフィッシングはハードル高く感じていた。

「SUPってコケるんじゃないかってよく言われるんですね。俺自身も、安定しないとか、面倒なイメージだったけど、意外とコケないし、パドルの仕方だけ覚えればまったく問題ない。最初に行った時、友達はバンバン釣っているのに俺はなかなか釣れなくて、どうにかこうにかホウボウを1匹釣って、それでハマったっすね」

supを漕ぐSAMI-T
まだキャリア2年半ほどだが、漕ぎ方が堂に入ってる。

以来、およそ2年半で100回以上は沖に出ている。釣った魚種は多岐に渡り、鯵、鯖は当然のこととして、真鯛、鮃、鰆、鰤、アカムツなど、食べて美味しい魚ばかり20種類以上。釣って、捌いて、食べる。キャッチ&イートの釣りがSAMI-Tさんの基本で、自宅の冷蔵庫には常に魚が入っているという。仲間の誕生日には、友人たちと沖へ出て、魚を釣って舟盛りにして祝うのだという。釣れ過ぎた魚は友人が営む居酒屋へ。何か災害があったとしても、魚に関しては生き延びるだけの量を釣ることができるとSAMI-Tさんは言う。

「小さい魚はリリースすることもあるけれど、残念ながら稀に死んでしまうこともある。でも、それは鳥が食ったり、他の魚が食べたりする。そうやって自然界が回っているんだと思うから。SUPフィッシングを始めて、海、すごいなと思うんですよ。海って偉大だなと思う瞬間があるんですね。太陽が顔を出す前から漕ぎ出して、海の上に浮かんでいる間にだんだん夜が明けてくる。おお〜!って思わず声が出るくらい、めちゃくちゃ気持ちがいい。(笑)。釣りをしながらいろんなことを考えるけど、つまるところ自分って小さくて、海は偉大だなって思うんですよ」

海に触れるようになってから一度もバトルに負けてない

波があればサーフィンをし、波がなければSUPフィッシングをする。だから常に海の変化と共に暮らしがあり、その変化に敏感でいることが、いい波に乗り、魚を釣るコツという。サーフィンのために海に入っていても、小魚が追われて暴れるナブラが立てば、そこまで覗きにパドルして行く。潮の干満、流れの強さ、風、波、海底の形状、それらを感じながらの暮らし。

「海の生活に変わって、夜21時を過ぎたらもう眠い(笑)。夏だったら朝は2、3時に起きて、4時過ぎには海の上にいるみたいな暮らし。暑いから8時には上がって、まだ丸々1日残ってるでしょ。そこから仕事して、夜に帰ってきた時にはもうヘロヘロみたいな(笑)。生活リズムは、明らかに海で変わった。

ずっと音楽メインで生きてきて、音楽は人を豊かにするってのは揺るぎないし、そのエネルギーは間違いない。音楽をやってなかったら、サーフィンとSUPフィッシングへの流れもないなと思ってるんで。夜は眠くなるけど(笑)、逆に海に接するようになってから、自分の音楽的なものもよくなってるんすよね。ここ2、3年はやってないけど、海外のショーとかバトルとか、海に入るようになってから一回も負けてない。その結果は、海と関係してるって勝手に思ってる。海に入って、太陽浴びて、塩水に浸かって、健康的だからね。きっとメンタルが安定するってことなんでしょうね」

フグを釣り上げたSAMI-T
釣れたのは、フグだが、それでも手応えがあれば楽しい。

釣れたのはフグばかり、
それでも翌日には

富士山を背景に釣りをするSAMI-Tさんの写真を撮りたくて、横須賀市秋谷の立石海岸に誘った。普段は、それほど遠くない沖ですぐに200m以上の深場になる小田原方面を中心に釣りをしているという。SAMI-Tさんは、仲間から「立石海岸ではイトヨリ鯛、真鯛などが釣れる」という情報を聞いていた。

かつては空気を入れるインフレータブルのSUPに乗っていたが、鯛のヒレの棘で穴が開き、空気が漏れたことがあるために現在はハードボードと呼ばれるタイプのSUPを使っている。SAMI-Tさんが手がけるブランド〈Nature Gang〉の赤い旗を買い物カゴにセットして、いざ、沖へと漕ぎ出していく。

目に見えるスピードが速いわけではないが、あっという間に浜からは100m以上離れてしまった。SUPフィッシング最大の魅力は浜から投げても届かない、かと言って船では近寄りづらい距離で釣りができるところ。誰かが教えてくれるわけでもなく、当然、釣り場も自分で探していく。

「そろそろ」と言って、ジグと呼ばれる擬似餌を底まで垂らし、何度かしゃくると、フグが釣れる。しかもいいサイズ。だが、フグ調理の免許がなければ食べられない。リリースして、何度か繰り返すも釣れるのはフグばかり。


「少し場所を変えようか」とさらに沖へと漕ぎ出し、浜からは1km以上離れてしまった。その日は風もなく、海面もとろけるような質感。「あ〜、気持ちいい」と声に出すSAMI-Tさんの実感がよくわかる。「海は自由なんすよ」というSAMI-Tさんの言葉の意味が体感できてしまうほど。遠景には、江ノ島、富士山が見える。

気持ちはいいが、釣れるのはフグばかり。慣れないポイントのせいもあるだろう。しばしばスマホを取り出して海図のアプリ〈海釣図〉を開き、地形を読んでいる。普通の地図と同じように等高線によって海の深さが示され、海底の変化がわかる。自分の居場所もGPSで示されるために、狙いのポイントまで的確に行ける。


2時間ほど、陽が暮れるまでまったりと釣りをしたが、この日はフグと、骨が多くあまり釣り人に好かれていないエソ以外の魚は釣れなかった。Tシャツ短パン姿で、全く水に濡れずに浜へと上がってきたSAMI-Tさんは、ボードを車に積みながら、「これは、ちょっと悔しいから、明日も行かないとダメだな」と言った。


翌日、宣言通りにカンパチの子ども・ショゴをぶら下げた写真を送ってきた。

Nature Gang〉のYouTubeチャンネルでは、SUPフィッシングの入門編からバトルまで、様々な情報を配信中。TikTokも。