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〈Ginza Sony Park〉が丸ごと坂本龍一に。「sakamotocommon GINZA」の全貌を公開!

Ginza Sony Parkが坂本龍一の音と記憶に包まれる10日間。坂本が遺したものを後世に繋ぐプロジェクトがいよいよ始動した。

2025年1月26日にグランドオープン予定の〈Ginza Sony Park〉。そのオープン前の〈Ginza Sony Park〉にて、坂本が遺した作品やアーカイブを体験できるプログラム「sakamotocommon GINZA」が、12月16日からスタートした。12月25日(水)までの10日間限定で開催される。

銀座にそびえ立つ地上5階、地下4階の建物が、丸ごと坂本龍一の遺したもので構成されるという。打ち放しのコンクリート空間を贅沢に使い、坂本の遺した作品や活動を体感することができるプログラムだ。

「sakamotocommon GINZA」の入場には、クラウドファンディングへの参加が必須となっている。参加者は期間中、何度でも会場に入ることができるというのだから驚きだ。

このプロジェクトは、ただの展示会ではない。参加者一人ひとりが「sakamotocommon」の活動に賛同し、坂本の遺したレガシーを共有し広げていくという、全く新しい体験ができるプロジェクトだ。

坂本龍一とクラウドファンディング。未来へ遺すための化学反応は起こるのか?

「sakamotocommon」が、はじまりの場所として〈Ginza Sony Park〉を選んだのはなぜか。それは、〈Ginza Sony Park〉が都市における公共空間の在り方や、新しい時代の文化と建築の在り方を指し示す建物であるからだ。その都市への眼差しは、「sakamotocommon」が目指しているレガシーを共有化する未来と通ずるものがある。同じ未来へのベクトルを持つ、新しい取り組みと新しい場所が融合して生まれたのが「sakamotocommon GINZA」なのだ。

Ginza Sony Parkが、「sakamotocommon」のはじまりの場となります。

sakamotocommonは、坂本龍一が遺したものを共有化する試みです。

坂本龍一が残した知的財産、楽器、蔵書、その他、さまざまな”遺産”のコモン化を目指し、未来のクリエイターのために利活用することを目指します。

Ginza Sony Parkは、都市における公共空間(=コモンズ)の在り方、新しい時代の文化と建築の在り方を指し示す非常に価値のある建物です。sakamotocommonは、Ginza Sony Parkのその姿勢と取り組みに強く共感し、共鳴します。

そこで、sakamotocommonとGinza Sony Parkは創造を共有する場を仮設することにしました。

坂本龍一が遺したものはいかに共有されるべきなのか。そこに答えがあるわけではなく、考え続け、そして、問いかけ続けます。

sakamotocommonがこれから社会により開かれたものとして活動をしていくためにも、みなさまの支援が必要です。まずはGinza Sony Parkに足を踏み入れ、当事者になってみてください。

sakamotocommon

本プロジェクトで展示される作品やプログラムを紹介しよう。

3Fフロアでは、坂本が日々採集していた雨の音や風の音など、収録された年代と場所が異なる7つのフィールドレコーディング素材をこの企画のために特別な 360 Reality Audioミックスした立体音響を、まるでその場にいるかのような没入感を体感できる立体的な音場を再現する360 Reality Audioの環境で楽しむことができる。会場では音源と一緒に、レコーディングの様子を撮影した写真も一緒に展示がされるようだ。

さらに、坂本が自ら乃木坂ソニースタジオで制作に立ち会った最後のアルバム『12』の360 Reality Audioバージョンも同会場で聴くことができる。なんとこの360Reality Audioのバージョンは海外では公開されていたが、日本では初披露となるらしい。音楽だけでなく、坂本の音への情熱と細部へのこだわりを感じることができる特別な体験となるだろう。

同フロアには、「Sakamoto Library Extension」が併設。坂本自身の本を多くの人と共有する事業「坂本図書」の蔵書の中から同タイトルの古書を揃えており、坂本氏自身が心を寄せられた書籍の一部を、日々収集をしてきたフィールドレコーディングの音源と共に楽しむことができる。

なんと今回、クラウドファンディングの返礼品として、この会場でも流れている2008年に収録されたグリーンランドのフィールドレコーディング音源が手に入るそうだ。坂本氏が生前に採集した貴重な音源を入手できる貴重な機会であることは間違いない。

4Fフロアでは、坂本が遺した「Merry Christmas Mr. Lawrence」などの計6曲の本人の演奏データを、〈Ginza Sony Park〉の空間中央に設置された「Opera Piano」が奏でる。クリスマスシーズンに、まるで坂本本人の演奏を目の前で聴くことのできるような贅沢な機会だ。


ソニービルの面影が残る〈Ginza Sony Park〉の地下空間が広がるB2フロアでは、人間がふだん知覚することのできない「電磁波」をセンシングし可視・可聴化する『Sensing Streams 2024 - invisible inaudible(GINZA version)』を体験できる。2014年に坂本龍一と真鍋大度のコラボレーション作品として「都市と自然」をテーマとした札幌国際芸術祭で初披露され、「都市の血流としての情報」という概念を表現している。これまでも、アムステルダムなど様々な場所で展示され、各地の電磁波環境に合わせてカスタマイズされてきた。今回の銀座バージョンも、この場所特有の電磁波環境を反映した独自の体験を提供している作品だ。

ソニーの高画質LEDディスプレイ Crystal LEDを使った新たな形で展示される。©Ginza Sony Park Project

真鍋大度よりコメント

坂本さんからお声がけいただき実現した本作品は、私たちが共に魅了されていた「人間の知覚を超えた世界」を探究する旅でした。

その過程で、人間中心の世界観をどのように新たな視点で捉え直すことができるかを模索し、制作を通じて重ねた坂本さんとの対話は、アーティストとしての私の表現の可能性を大きく広げてくれただけでなく、その一つ一つの瞬間が本当に楽しく、かけがえのない経験となりました。

この作品に込められた私たちの探求の軌跡をご覧いただければ幸いです。

また期間中には、「sakamotocommonとは」を明らかにしていく参加型トークイベント『sakamotocommon 構想会議』を12月23日に開催。設立メンバーであるパノラマティクスの齋藤精一氏と黒鳥社の若林恵氏をむかえ、「sakamotocommonとは」を明らかにしていく参加型トークイベントだ。クラウドファンディングサイトからの応募は終了したが、当日券も用意されるそうで、詳細は「sakamotocommon」のSNSをチェックしてほしい。

「sakamotocommon」は遺したものをもとにどう活動していくのか、その具体的な方法や可能性について、皆で語り合う貴重な機会になるだろう。

左から、パノラマティクスの齋藤精一氏と黒鳥社の若林恵氏。

齋藤精一(パノラマティクス主宰)よりコメント

人は人生の中でたくさんのものを創り出す。

自分のため、家族のため、友人のため、企業のため、社会のため。

坂本龍一さんは沢山のコトを、たくさんのモノを、たくさんのヒトと、沢山の場所と、沢山の時間と人一倍創り続けた人だと思う。それなのに、坂本さんは創作のほとんどは周りから与えられ、自身は数%をコンポーズしたと話していたという。

坂本さんが残した様々な、モノやコト、活動や哲学さえもこれから他の人の創作に還元するのが、今のタイミングだと思う。

従来の偉人のアーカイブではなく、生きた道具として社会に坂本龍一を戻し、広げる作業がsakamotocommonなのかもしれないと私は想う。

「sakamotocommon」構想会議ではその可能性や具体的な方法について、若林さんだけでなく、皆さんと話し続けるスタートになると良いと思う。

「sakamotocommon」について、詳しくは以下の記事をチェックしてほしい。

ただ今、準備中。sakamotocommonってなんだ?

このように「sakamotocommon GINZA」は、多様なプログラムで構成されている。クラウドファンディング参加者は期間中であれば何度でも入れるそうなので、坂本の遺産を繰り返しインストールする場として利用するのもよいかもしれない。

「sakamotocommon」がこれから社会により開かれたものとして活動をしていくためには、賛同者の支援が必要だ。まずは〈Ginza Sony Park〉に足を踏み入れ、あなたも当事者になってみてはいかがだろうか?

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