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斉藤壮馬の「ただいま、ゼロ年代。」第36回『桜蘭高校ホスト部』

30代サブカル声優・斉藤壮馬が、10代のころに耽溺していたカルチャーについて偏愛的に語ります。

photo: Natsumi Kakuto(banner), Kenta Aminaka / styling: Yuuki Honda(banner) / hair&make: Shizuka Kimoto / text: Soma Saito

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『桜蘭高校ホスト部』

斉藤壮馬

我が家は祖父母、両親、ぼくら3兄妹の全員が本や漫画を読むのが好きで、互いの面白かったものをシェアするのが常だったと、以前も書いたように思う。

この連載で紹介した作品のいくつかは、そうして知ったものである。特に歳の近い上の妹とは、ほとんど毎日のように貸し借りをしたのをよく覚えている。

だからおそらく、今回紹介する作品も上の妹経由で知った……のだと思うがいまいち自信がない。

というのも、上の妹はそこまでアニメを観るタイプではないのだが、ぼくはこの作品をアニメで知ったような記憶があるからだ。

妹よ、間違っていたらごめん。

ということで、今回はアニメ『桜蘭高校ホスト部』について語りたい。

斉藤壮馬

葉鳥ビスコ先生による漫画『桜蘭高校ホスト部』(2002年連載開始)を原作とするこのアニメは、2006年にテレビ放送され、幅広い層の支持を得た。

上流階級の子息や息女が通う私立桜蘭学院高等部の1年生にして特待生である藤岡ハルヒは、ひょんなことからイケメン生徒たちが「ホスト」として客をもてなす「ホスト部(クラブ)」の一員となってしまう。

高級な花瓶を割って背負った借金返済のため仕方なく活動に加わるハルヒだったが、実は彼女は女の子で——。

まずもって、葉鳥先生の漫画それ自体が素晴らしいのは言うまでもない。

美麗な絵で描かれるシリアスとコメディのメリハリが読む手を止めさせないし、何よりキャラクターがみんな、本当に魅力的だ。

ハルヒの関わるホスト部の面々もかなり個性的である。

ホストとして完璧とも思える振る舞いを見せながら、その実かなりのおバカで、とにかくさまざまな表情を見せてくれる部長・須王環(すおうたまき)。

一見優しそうだがすべての物事に計略を巡らすホスト部のフィクサー・副部長の鳳鏡夜(おおとりきょうや)。

紹介するだけで文字数が尽きてしまいそうなほど、たくさんのキャラクターが活き活きと物語を彩る。

ちなみにぼくは、常陸院光・馨(ひたちいんひかる・かおる)という双子が大好きで、とりわけ弟の馨に心を奪われた。

アニメでは常陸院ブラザーズはそれぞれ、光を鈴村健一(すずむらけんいち)さん、馨を織田圭祐(おだけいすけ)さんが担当されているが、セリフの息の合いっぷり、そして次第にそれぞれの道が少しずつ変わっていくストーリーには思わず涙腺がゆるんだ。

そんな素敵な物語が、アニメになることでよりパワーアップしているのだ。

アニメでは、コメディはよりテンポよく、シリアスは徹底的にシリアスに作られ、とにかく流れに身を委ねていれば必ず心が動かされる。

特にコメディパートは環役・宮野真守(みやのまもる)さんのナチュラルかつハイテンションなアドリブの数々をはじめ、目まぐるしく絵が変わり、そうそう、おれはこういうノリのアニメが大好きだったんだ、と久々にしみじみした。

また、オープニングテーマである河辺千恵子さんの「桜キッス」も素晴らしい曲だ。ぼくのときめきはこの曲から始まったと言っても過言ではない。

今回は執筆の都合でさらっとしか観返せなかったが、必ずまた時間をつくってたっぷり作品世界に浸りたいと思う。

老若男女すべての方におすすめの作品である。

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