藤異秀明『真・女神転生 デビルチルドレン』
小学生のころ、我々は大きく二つの派閥に分かれていた。
コロコロコミック派か、コミックボンボン派か——。
といっても、だいたいみんなどちらかを定期購読しているので、持っていない方を友人と貸し借りして両方とも楽しんだものだ。
ぼくは毎月ボンボンを買っていたが、当時通っていたピアノ教室にコロコロがあったので、労せずしてどちらも読むことができた。
今考えると、その他にスイミングスクールと空手にも通っていたから、月謝を払ってくれていた両親には頭が上がらない。
さて、そんな両誌だが、印象に残っている作品はたくさんある。コロコロはいつかの機会に譲るとして、今回はボンボンにフィーチャーしよう。
サイボーグクロちゃん、ウルトラ忍法帖、マシュランボー、クロスハンター、携帯電獣テレファング、幻想世界英雄列伝フェアプレイズ……。好きだった作品は枚挙にいとまがないが、中でも強烈に記憶に残っている作品がある。
『真・女神転生 デビルチルドレン』。今回はこの作品について語りたい。
アトラス社よりリリースされている「女神転生」シリーズを子供向けにしたゲームのコミカライズである。
しかしながら、作者の藤異秀明氏も新装版の巻末でおっしゃっているように、その内容はかなりダークかつグロテスクだ。少なくとも小学生のぼくにはあまりにも刺激的だった。
主人公の小学生・甲斐刹那(かいせつな)は、幼馴染の少女・要未来(かなめみらい)と騒がしくも満たされた日々を過ごしていた。
しかし突然彼の元に魔界からデビルが現れ、攻撃を仕掛けてくる。死にかけた刹那は突如覚醒し、召喚器デビライザーからケルベロス・クールを呼び出し敵を退ける。
彼らの出会いは、世界の運命を左右する壮大な冒険の幕開けだった——。
小学生にこんな冒頭を読ませたら、好きにならないわけがない。まずもって、甲斐刹那という名前がもう格好いい。しかもデビライザーという銃でデビルを召喚して戦うなんて、垂涎ものではないか。
迫力のある作画も多面的なキャラクターもたまらない。さらに単なる勧善懲悪とはまったく異なる陰鬱なストーリーも必読である。終盤の圧倒的展開とカタルシスたるや。今の小学生たちにもぜひ読んでいただきたい。
ちなみに個人的にお気に入りのキャラは高城ゼットくんとフェンリルです。あと、詳しく話すとネタバレになってしまいますが途中で出てくる猫……のようなあの存在の、あるコマの表情も素晴らしい。
そういえば余談だが、ぼくはこのタイトルのゲームは持っていなくて、家から自転車で20分ほどいったところに住んでいるTくんの家で、彼がプレイするのをいつも見ていたものだ。
ただ横から眺めているだけの自分にも、いつか刹那のようなプロローグが訪れるんじゃないか……そんな淡い期待を抱いていたような気もする。
ある意味では、その後ぼくが中二病まっしぐらとなる要因の一つとなる作品だったといえるだろう。そして再読した今、ゲームを買ってプレイしたい欲が湧き上がってきている。
33歳のデビルチルドレンが誕生するのも、そう遠くない未来の話かもしれない。